年金の必要支払期間が10年間に。そのメリットとデメリットとは?

平成29年から公的年金をもらうために必要な期間が短縮になります。これまで原則として25年掛けなければならなかった年金がこれからは10年掛ければもらえます。この制度変更によって、将来にもらえる年金にどのような影響があるかをみていきます。

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年金は10年加入でいくらもらえるのか

10年加入の場合の計算式

老齢年金を受け取るには、原則として25年以上の加入期間(受給資格期間)が必要でしたが、将来の無年金者を少なくするために、平成29年8月1日から加入期間が10年あれば老齢年金を受給できるようになりました。 これにより、現在、65歳以上の無年金者(約42万人)の約4割の人が年金を受け取ることができるようになると言われています。ただし、受け取れる金額は掛けた期間に応じたものになります。 老齢基礎年金は20歳〜60歳までの40年間(480ヶ月)すべて保険料を支払った場合、満額の779,300円(平成29年度支給額)を受け取ることができます。しかし、40年に満たない場合は加入期間(10年〜39年)に応じて計算した年金額が受け取れます。老齢基礎年金の計算式は以下の通りです。

計算式:77万9,300円×保険料納付期間÷480ヶ月=老齢基礎年金(年額)

加入期間が10年の場合はいくらもらえるのか、また保険料の納付期間(11年〜15年)ごとに受け取れる老齢年金額をまとめました。

加入期間が10年(120ヶ月)だった場合

779,300円×120ヶ月÷480ヶ月=194,825円(年額)

加入期間が11年〜15年だった場合

11年の場合は21万4,300円(年額) 12年の場合は23万3,800円(年額) 13年の場合は25万3,300円(年額) 14年の場合は25万3,300円(年額) 15年の場合は29万2,200円(年額)

条件によって加給年金をプラスする

65歳になって年金生活に入った時に生計を維持している妻や子がいる場合は、「生活の手助け」として国が用意してくれているのが「加給年金」と「振替加算」。加給年金は厚生年金に20年以上加入していた夫が65歳になってから、振替加算は妻が65歳になってから受け取ることができる年金制ですが、この制度は自営業やフリーランスが加入する国民年金には適用されません。

加給年金とは

厚生年金の被保険者期間(加入していた期間)が20年以上ある夫が65歳に達した時に、その夫に生計を維持されている妻、または子供がいる時に夫の年金額に加算される年金のことです。1人につき20万円以上も加算してくれる制度のため、かなり生計の足しになります。 ただし、妻や子には年齢制限があり、妻は65歳になるまで、子供は18歳に到達した年度末までがもらえることになっています。妻と子の両方が年齢条件を満たしている場合は重複して年金が加算されますが、加給年金は夫が65歳になると自動で貰えるのではなく、年金事務所に申請しないと受給できません。

加給年金の注意点

加給年金は配偶者(ここでは妻)が65歳になると受給資格を失ってしまいます。 その代わりとして妻が65歳からは別の年金を受け取れるようになります。それが「振替加算」です。基本的に65歳からは妻も老齢基礎年金を受け取れるようになるため、妻は「老齢基礎年金+振替加算」の年金額を受け取れるようになります。 ちなみに配偶者(妻)の方が年上の場合、加給年金を受給することは出来ませんが、振替加算は受給することはできます。夫が65歳になった時点で申請すれば、その時から振替加算を受け取ることができるようになります。

年金の資格期間が10年に短縮されたメリット

老後の不安が少なくなる

年金の受給資格期間が25年から10年に短縮されたメリットは、国民年金を受給できるようになったという人が多くなることです。受給要件の改正によって、「年金を受け取れない人(無年金者)への救済措置」がとられ、老後の不安が少なくなるとみられています。 たとえば、専業主婦の場合です。現在、専業主婦は第三号被保険者として年金を受給することができますが、かつては自分自身で年金保険料を納めていないと被保険者になれませんでした。そのため、新卒で入社して数年働いた後に結婚退職した専業主婦の人は現在、年金を受け取れていない…という人も少なくありません。 しかし、今回の制度改正によって受給資格期間が10年に短縮されるため、かつては受け取れなかった人も年金を受け取れる可能性が広がり、支払期間が10年だったら年額194,825円、月額16,235円を受け取ることができます。老後の生活を考えると体力や気力が落ちているなかで、これだけの金額を稼ぐのは大変です。

免除や救済措置申請の手間がなくなる

失業や病気などによって年金の支払いが難しい場合は支払免除や救済措置の申請をする必要がありましたが、今回の短縮によってその手間がなくなりました。公的年金を最低10年支払えば将来にもらえる年金があることで、個人の自己負担が軽くなりました。

寡婦年金も10年で貰えるようになる

寡婦年金は、第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった時、支払った保険料が掛け捨てにならないよう「遺族となった妻」に支給される有期年金です。年金受給資格の加入期間が10年に短縮されたことにより、寡婦年金も平成29年9月から保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて「10年以上」で支給されることになりました。 寡婦年金を受給するためには要件を全て満たす必要がありますが、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでに支給。年金額は夫の第1号被保険者期間だけで計算した老齢基礎年金額の4分の3となっています。

寡婦年金の受給要件

☑死亡した夫の国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間(免除期間を合わせて)10年以上あること ☑死亡した夫が障害基礎年金の受給権を有したことがない ☑死亡した夫が老齢基礎年金を受給したことがない ☑死亡した際、夫によって生計維持されていた妻(内縁関係を含む)であること ☑妻が老齢基礎年金を繰上受給していないこと

無年金者の人数が減る

年金の加入期間が10年に短縮されたのは、低所得者の無年金者を救済することが背景にあります。社会保険庁が平成19年に実施した調査によれば、「無年金者(年金の受給資格がない人)は見込み者を含めると118万人にものぼる」という結果が出ました。 支払期間が短縮される以前は、日本の場合、「25年(300ヶ月)という受給資格期間がない」と年金を受給できず、こうした受給資格期間は他国と比較しても長すぎるとの指摘もありました。たとえ、24年間年金を払っていたとしても、1年足りないだけで年金が受給できず、「資格を満たせないから払わない」という人もいたかと思います。受給資格期間の短縮は40%近いともいわれる国民年金の未納率の改善にもつながるのではないかと期待されています。

年金の資格期間が10年に短縮されたデメリット

財源確保のために消費税率が10%に上がる

年金の加入期間が25年から10年に短縮されたデメリットとしては、財源確保のために消費税が10%に引き上げられることです。公的年金を最低10年支払っていれば月額1万6,000円程度が支給され、支給対象者も増えます。日本政府は期間短縮で受給者の増加分を650億円と試算し、増税分をこの財源に充てようとしています。

未納問題が起こる場合が心配される

年金支払期間の改正によって年金保険料を最低10年支払えば「受給資格」が得られるようになった一方で、支払期間の短縮によって保険料の未納問題が起こる場合が心配されます。 失業などによって低所得に陥ってしまうと月額16,900円の保険料を支払うことが大きな負担となってきます。事実、厚生労働省によると平成28年度の国民年金保険料の納付率は65%に留まっていますが、低所得などで保険料を免除・猶予されている人は除かれています。これら人を含む実質的な納付率は40.5%と低いままです。 個人の負担額が大きい年金保険料ですが、納付月数が10年に短縮されることでこの期間だけ保険料を納めればいいと考え、それ以上の支払いはしない人が出てくる可能性があります。 さらに10年以上は保険料を支払っていても25年には満たない人のなかには、改正後は「受給資格を得ることができる」ということに安心して、それ以上は追納する必要はないと考えるかもしれません。

貰える支給額が少なくなる

年金の受給資格期間の短縮で、新たに年金を受け取る人は増加する見込みですが、納付期間が10年(120ヶ月)の場合、受け取れる老齢基礎年金は「受け取れる老齢基礎年金は「780,100円(平成28年度満額)×(120月÷480月)=195,025円」となります。 この間に厚生年金に加入している期間があれば、その分老齢厚生年金も受け取れます。しかしそれでも年金額が少なく、年金だけでは基本的な生活費を賄うことは難しいです。年金は掛けた月数が多いほど年金額が多くなる仕組みです。 また国民年金の納付率は、平成28年度は65%(法定免除、全額免除、猶予分を除く)にとどまっています。一部免除となっている人でも4割が未納で、経済的な理由から国民年金保険料の支払いが難しい人が少なくありません。受給資格期間の短縮により無年金者は減っても、低年金の人の生活保障をどうするかという問題は残っています。

遺族年金は25年かけないと貰えない

公的年金は老後の生活の一部を保障するだけではなく、保険料の納付者が死亡した場合についてもその遺族(妻や子供)にも「支給金」という保証があります。国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金、会社員が加入している厚生年金からは遺族厚生年金が支給されます。

国民年金と厚生年金で支給対象が異なる

遺族基礎年金は遺族の保障範囲が子どものいる妻のみに限られますが、遺族厚生年金は子どもの有無にかかわらず妻であれば受け取れます。ただ遺族年金を受給するのに注意したいことは、保険料の納付者が死亡すれば遺族は無条件に受け取るものではなく、保険料の滞納期間が長い場合などは受け取られません。

滞納期間について

年金制度に加入すべき期間のうち3分の1以上の滞納があると遺族年金は支給されませんが、平成27年3月までは被保険者が亡くなる直近の1年間に滞納がなければ良いと救済措置がありますが、これらの保険料の納付要件を満たさない限りは支払いはありません。

遺族基礎年金の受給要件

日本年金機構のHPによると、国民年金の被保険者で老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上の人、「遺族厚生年金の受給要件」は厚生年金の被保険者(会社員)で老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上、そして1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けられる人で、その他要件を満たした人が死亡したときにそれぞれ遺族に払われます。 年金保険料は将来の生活を保障するだけではなく、被保険者が思わぬことで死亡した場合でも受給要件を満たせばその遺族が貰えることができますが、未納期間が1ヶ月でもある場合は条件によっては貰えないこともあります。国民の義務として年金保険料は払う、もしくは現在の生活が苦しく支払う余裕がない場合は免除申請を行うことで遺族が遺族年金を受け取る権利をある程度は守ることができます。

10年で年金を貰うための手続き方法

貰える年齢になると黄色の封筒が郵送されてくる

年金の納付済み期間が短縮され、新しく年金を受け取る資格ができても、放っておいては年金は貰えません。日本年金機構から送付されてきた書類に必要事項を記入して、申請をする必要があります。 日本年金機構からの書類は、専用の黄色い封筒で送付され、早い人には平成29年2月から、遅い人でも7月上旬には届いているようです。まず、この封筒を届いていることを確認し、手続きしてください。書類の手続きにあたっては、2つすることがあります。 ☑記載されている名前や年金記録などが正しいことを確認する ☑必要に応じて書類を揃える

ねんきんダイヤルにかけて相談予約する

「黄色い封筒が届いていない」「書類にわからないところがある」などの相談は「日本年金機構」が窓口になります。日本年金機構が開設している、全国の年金事務所、街角の年金相談センター及び街角の年金相談センター(オフィス)などで相談しましょう。 あらかじめ「ねんきんダイヤル」で予約しておくと、窓口で記録を取り寄せるために待たされることはないため、できるだけ予約してから行きましょう。

年金請求書を確認する

年金受給開始年齢の3ヶ月前頃に、日本年金機構から「年金請求書(事前送付用)(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が送られてきます。この年金請求書に必要事項を記入し、必要書類とともに「年金事務所」へ提出することで請求手続きが完了します。 手続きは、誕生日の前日からできます。年金請求書には、住所・名前・年金加入歴などがあらかじめ印字されていますので、間違いのないよう記入。ここで気をつけたいのが、年金の支給が自動的に始まるという勘違い。自分自身で請求しなければ、年金を受け取ることができませんので注意が必要です。 「年金請求書(事前送付用)(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」が届かない場合、または海外からも年金の請求や年金記録の確認が可能。これらケースで年金を請求するときは、日本年金機構のHPからダウンロードした年金請求書に記入し、必要書類を添えて住民登録している住所地を管轄する年金事務所に提出してください。

年金決定通知書が郵送されたあとに受給開始

申請書類を年金事務所に提出し、受付後2ヶ月以内に「年金証書・年金決定通知書(年金振込通知書)」で通知はがきが届き、受給開始です。老齢年金の受給手続きから支給までの流れは以下のようになります。

老齢年金の受給手続きから支給まで

☑1. 「通知」 年金支給の通知が誕生日(男性61歳、女性60歳)の3ヶ月前に通知が郵送されてくる。 ☑2.「 申請」申請書類をそろえて、申請書を社会保険事務所かセンターに提出。 ☑3. 「年金振込通知書」 老齢基礎年金・老齢厚生年金の請求は日本年金機構の受付後2ヶ月以内に「年金証書・年金決定通知書(年金振込通知書)」で通知はがきが来る。 ☑4.「 支給」 年金は偶数月15日に金融機関に振込まれる。定期預金金利優遇等の条件が異なるので、金融機関指定は手持ち資産を勘案の上決定。

公的年金の制度を理解して期間を選択しよう

国民年金のみの加入者で老齢基礎年金だけを見ると、受給資格期間が短縮されたところで、「10年の納付で年間195,000円、月1万6,000円にしかならず生活ができない…」と思うかもしれません。しかし、住宅ローンなどの負担が大きく、老後になって生活苦に陥る「老後破綻」という言葉も多く使われる昨今、定年退職後に悠々自適に生活している高齢者は一部なのかもしれません。 65歳以上になってに新しく毎月1万6,000円の収入を得ることは難しい一方で、生きている限り何歳になってももらえるお金があることは精神的に安心です。自分の老後を助けてくれる公的年金を得るために年金制度に加入し、保険料を払うことは義務ではなく貴重な権利だと捉えましょう。

公認会計士・税理士 伊藤 温志

エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
会計事務所の経営を通じ1,000社を超える顧客の税務/会計/保険/資産運用の相談に対応。
通常の代理店ではみれない顧客情報を扱っていることから、豊富な引出しを有し多くのお客さまから支持を集めている。