高齢者の暮らしを社会全体で支える、介護保険。ただ、介護保険のサービスを受けるには、要介護・要支援認定を受ける必要があります。介護保険の仕組みや、要介護認定を受けるための方法を学び、安定した老後の生活を迎えられるよう、しっかりと備えましょう。
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介護保険の認定の方法
介護保険とはどんなものか
介護保険制度とは、健康保険と同様に、国民が40歳の誕生日を迎えたときに加入し、介護を必要とする人が、適切な介護サービスを受けられるよう、社会全体で支え合う仕組みです。 現在は、核家族化や少子高齢化が進み、非介護者を家族や身内だけで支えるのは難しく、被介護者が自立できるよう支援したり、その家族の負担を減らすためにサポートするなど、被介護者と介護者が安心して生活できる社会を目指すために制定されました。 1997年12月に介護保険制度が制定され、2000年4月から施行された介護保険制度は、被介護者の自立をサポートするための「自立支援」、被介護者が自由に選択することで、介護サービスを総合的に受けることができる「利用者本位」、支払った保険料に応じ、給付金やサービスを受けることができる「社会保険方式」の3つの柱を基本に制度が成り立っています。 介護保険制度は、高齢者のすべてが人間としての尊厳を保ちながら、自立して安心した生活を送れるよう、地域社会全体で支え合い、介護サービスをしていくことが基本理念となります。
介護保険が利用できる条件
介護保険を利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。要介護認定とは、どのような介護が、それぞれどの程度必要なのかを、介護保険サービスの利用希望者に対して判定して、決定されます。65歳になると、介護保険の加入者に対して介護保険被保険者証が交付されますが、介護保険サービスを受けるためには、この保険証を提示するだけでは、受けることができません。 介護保険サービスを利用する場合は、まず要介護認定を受け「要介護」もしくは「要支援」の判定を受ける必要があります。要介護認定の判定は、市区町村に申請をした後、まず1次判定の結果を受け、その後、2次判定である、「医療・保険・福祉」についての学識経験者で構成される、介護認定審査会によって判定されます。 ☑1. 1次判定は、市区町村の担当者の聞き取り調査や主治医意見書をもとに、介護にかかると想定される時間(要介護認定等基準時間)をコンピューターが推計して算出し、7つのレベルに分類します。 ☑2. 2次判定は、1次判定の結果をもとにして、介護認定審査会の審査によって、要介護度が判断されます。
介護保険の使用できる施設
介護保険法により、介護保険の使用できる施設サービスは、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設の3つがあげられます。
介護老人保健施設
利用者の病状が安定していて、入院治療の必要がなく、医療ケアやリハビリを、医師や理学療法士のもとで受けながら、在宅での介護を目指すことを目的とした施設です。利用者の在宅復帰を前提としているので、長期で利用することはできません。
特別養護老人ホーム
身体上、または精神上の障害によって、常時介護が必要な状態の人が利用するための施設です。入居希望者が非常に多く、順番待ちをしても、実際は入居に時間がかかるといった問題も抱えています。
介護療養型医療施設
介護保険制度がスタートした際、介護の療養病床として許可された医療機関のことを指しますが、すでに医療行為が必要ないにもかかわらず、退院した後に介護してくれる人がいないという理由で、やむを得ず入院を続けているいる「社会的入院」の温床になっているとの批判があります。この医療施設は、2017年度末には介護老人保健施設への転換にともなって、廃止される予定です。
介護度の変化と保険の範囲
介護認定については、家族のサポートなしでも日常生活を送ることが可能な「自立」と、介護サービスの利用によって改善が見込まれる「要支援」、そして、一人で日常生活を送ることが困難で、何らかの介護を必要とする状態の「要介護」など、介護度は大きく3種類に分かれています。 自立と認定された場合、介護保険の給付金を受け取ることはできませんが、要支援と要介護のどちらかに認定されると、介護保険適用のサービスを利用することができます。また、給付金は介護度の高さによって、費用が変ります。
要支援1
日常生活を送るにあたっての、食事や排泄、移動や入浴など、基本的な手段的日常生活動作であれば、ほぼ自力で行うことが可能だが、症状の進行を防ぐために、買い物や家事全般、そして服薬や金銭の管理などにおいて、一部支援が必要とされる状態をいいます。介護保険制度の支給限度額は、月額50,030円となり、例えば月2回のショートステイや、週1回の介護予防訪問などの介護サービスを受けることが可能です。
要支援2
要支援1と比べ、手段的日常生活動作を行う能力に低下が見られる場合や、身の回りの世話など何らかのサポートを必要とし、歩行や立ち上がりなどの動作に、支えを必要である状態を指します。介護保険制度の支給限度額は、月額10万4,730円となり、例えば月2回のショートステイや週2回の介護予防訪問に加えて、歩行補助用の杖の使用や、福祉用具の貸与といった介護サービスを受けることが可能になります。
要介護1
要介護1は、手段的日常生活動作を行う能力が、要支援の状態からさらに低下し、部分的な介護が必要であったり、立ち上がりや歩行のときにも不安定さが見られる状態を指します。 介護保険制度の支給限度額は、月額16万6,920円となり、例えば、週1回の訪問看護、週2回のデイサービスの利用、週3回の訪問介護、3ヶ月の間に約1週間のショートステイ、さらに一部の福祉用具貸与といったサービスを受けることが可能になります。
要介護2
要介護2は、要介護1の状態に加えて、部分的な介護が日常生活動作において必要になり、理解力の低下や物忘れが見られる状態をいいます。介護保険制度の支給限度額は、月額19万6,160円となり、例えば、週1回の訪問看護、週3回の訪問介護、3ヶ月の間に約1週間のショートステイ、週3回のデイサービス利用、さらに一部の福祉用具貸与といったサービスを受けることが可能になります。
要介護3
要介護3は、日常生活動作と手段的日常生活動作の両方の能力が低下し、自力では入浴や食事が行うことができないなど、日常生活動作に対して全面的な介護が必要な状態を指します。 介護保険制度の支給限度額は、月額26万9,310円となり、例えば週1回の訪問看護、週2回の訪問介護、毎日1回の夜間の巡回型訪問介護、週3回のデイサービス利用、2ヶ月の間に約1週間のショートステイ、さらに福祉用具貸与といったサービスを受けることが可能になります。
要介護4
要介護4は、要介護3と比べると、さらに動作能力が低下し、排泄を1人で行えないなど、介護がないと日常生活を送ることが困難な状態を指します。介護保険制度の支給限度額は、月額30万8,060円となり、例えば週2回の訪問看護、週6回の訪問介護、毎日1回の夜間対応型訪問介護、週1回のデイサービス利用、2ヶ月の間に約1週間のショートステイ、さらに福祉用具貸与といったサービスを受けることが可能になります。
要介護5
要介護5は、日常生活動作や、手段的日常生活動作の両方の能力が著しく低下した場合をいい、意思の伝達が困難だったり、寝たきりなど、全面的な介助が生活全般にわたって必要とする状態を指します。 介護保険制度の支給限度額は、月額36万650円となり、例えば週2回の訪問看護、週5回の訪問介護、毎日2回の夜間対応型訪問介護、週1回のデイサービス利用、1ヶ月の間に約1週間のショートステイ、さらに福祉用具貸与といったサービスを受けることが可能になります。
介護保険の限度額と所得
介護保険施設に滞在すると、介護サービス費用の利用者負担分を支払う他に、居住費や滞在費、食費を支払う必要があります。居住費や滞在費、食費の具体的な水準や内容については、原則として利用者と施設との間の契約によって異なりますが、所得の低い人に関しては、負担の上限額が定められており、負担が一般の人と比べると軽減されます。また、負担限度額については利用者負担段階ごとに定められています。 なお、負担限度額認定制度を利用するためには、下記の二つの条件を満たす必要があります。また、この条件を満たした上で、課税年金収入額と非課税年金収入額、そして合計所得金額の合計額により、負担段階が決定します。
所得要件
世帯の全員(世帯分離をしている配偶者を含む)が、市民税非課税であること。
資産要件
配偶者がいる場合は合計預金額が2,000万円以下、もしくは配偶者がいない人は合計預金額が1,000万円以下など、預貯金などが一定額以下であること。
介護を認定してもらう流れ
地域の役所に申請
要介護認定を希望する本人が住んでいる、市役所などの窓口で申請手続きを行います。受付窓口の名称については、市区町村によって異なるため、ホームページや窓口に問い合わせて、しっかりと確認しましょう。 申請は本人、あるいは家族が代行して行います。家族が遠方に住んでいるため、窓口に出向くのが難しい場合については、地域包括支援センター、または居宅介護支援事業者などに代行を頼み、申請してもらうことも可能です。 介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定の申請が必要になりますが、申請には「介護保険被保険者証」や、40〜64歳までの人(第2号被保険者)が申請を行なう場合は、医療保険証が必要になります。さらに、自宅や施設などを訪問し、心身の状態に問題はないかを確認するため、市区町村などの調査員によって認定調査が行われます。 主治医の意見書は、市区町村が主治医に依頼をし、主治医がいない場合は、市区町村の指定医の診察が必要になります。また、費用なしで申請書の意見書を作成することができます。
調査員の訪問調査
申請書や介護保険被保険者証などの必要書類を提出し、受理された後、介護保険資格者証を受け取り、1次判定審査のための訪問調査の日程調整を行います。1次判定については、市区町村の担当者、もしくは委託されたケアマネジャー(介護支援専門員)が、訪問による聞き取り調査を行います。調査は本人の他に家族同席で行い、本人の普段の様子を家族にも質問し、本人に対する具体的回答を求められます。
必要な書類を集めて提出
その他に、主治医が病気の状態などをまとめて診断書を作成し、医学的な見地からの意見書も参考にします。市役所から、申請書に記入した担当の医師宛てに「主治医意見書」の用紙が送られ、介護を必要とする人の主治医は、医学的観点から診断病名や進行度などを、意見書に記入します。 主治医がいる場合には、わざわざ診察しなくても意見書を書いてもらうことができますが、主治医がいない場合は、市役所で指定医を紹介してもらって診察を受け、意見書を作成する必要があります。
二次審査は介護認定審査
二次判定を行う審査会の委員は、保険、医療、福祉に関する、専門員や経験者の5人程で構成されます。介護認定審査会では、コンピューターによる判定結果や、訪問調査による特記事項、主治医などの意見書を元に「介護や日常生活に支援が必要な状態かどうか」、「要介護度など、どのくらいの介護を必要とするか」など、一時判定のみでは判断できない介護の手間を判定します。 さらに、第2号被保険者に対しては、老化にともなう病気によるものかどうかも審査判定されます。
30日以内に結果が届く
必要な介護度に応じて認定を行い、原則として申請してから30日以内に、認定結果と介護保険被保険者証が郵送されます。認定の区分については、要支援と要介護の7つの分類のいずれか、もしくは非該当(自立)になります。要介護認定を受けると、認定書が発行されますが、万が一認定結果に不服がある場合は、通知があった翌日から60日以内に、都道府県にある「介護保険審査会」に不服申し立てすることができます。 介護サービスの計画が、以下のように無料で作成されます。
要支援の人
介護予防サービス(予防給付)を利用でき、地域包括支援センターでケアプランが作成されます。
要介護の人
利用者の選択による、居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプランを作成する「在宅サービス」や、直接利用者が申し込みでき、希望する施設を選ぶことができたり、施設のケアマネジャーがケアプランを作成する「施設サービス」などの、介護サービスを受けることができます。
非該当(自立)の人
介護予防事業などは、地域包括支援センターでケアプランを作成し、介護保険外のサービスや、介護予防事業(地域支援事業)などを利用することができます。サービスの利用者負担は、費用の1割または2割となります。要介護認定は有効期限が切れる前に更新手続きをする必要があり、更新の申請は、有効期限が切れる60日前から行うことができます。 非該当(自立)に該当する場合、介護保険のサービスを受けることはできませんが、介護保険以外の保健福祉サービスを受けることが可能です。さらに、生活機能の低下が見られると市町村が判断した場合は、市町村が実施する、「介護予防事業(地域支援事業)」を利用することができます。
介護を理解して負担を少なくする
介護保険の介護サービスを利用することで、介護される側や介護する側の負担も、それぞれ軽減することができるため、生活にとても安心感を得ることができます。頭の片隅で、誰もが一度は家族の介護について考えることもあるでしょうが、考えを先送りにするのではなく、常に介護保険の準備をしておくことは大切です。 介護の状態に合った、適切な介護サービスを受けるために、前もって介護にかかわる制度や、介護に必要になる費用をしっかりと理解して、将来に役立てていきましょう。
エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
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