遺族年金の仕組みを学び、妻に先立たれても慌てないために準備しよう

コツコツと老後のために払い続けている年金。万が一自分よりも先に妻が亡くなった場合、今払っている年金はどうなるのか、分からないことや、不安な人も多いはずです。遺族年金の基礎知識を押さえ、もしもの時に備えて年金の受給方法を学び、将来に役立てましょう。

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遺族年金に関する基礎ポイント

国民年金加入者は遺族基礎年金が貰える

国民年金の被保険者や、老齢基礎年金の受給資格を満たしている人に対して、死亡したときに支給されるものを、遺族基礎年金と呼びます。自営業の人や、専業主婦、そして会社員の人にも支給される遺族年金の1つです。 原則として、遺族基礎年金は18歳未満の子供を支えることを目的としており、子供がいない世帯には遺族基礎年金は支給されないため、注意しましょう。また、国民年金が未納の人にも支給されないので、国民年金はきちんと支払いましょう。 遺族基礎年金の条件と詳細は以下のとおりです。

給付条件

被保険者や老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上であり、保険料納付期間が加入期間の2/3以上あること。また、被保険者の死亡時点から、前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと。

給付対象

18歳未満の子供がいる夫(夫の場合は、条件として妻死亡時に55歳以上であること)、または妻であること。また、18歳未満の子供(1級、2級障害者の場合は20歳未満)であること。

給付額

77万9,300円+子の加算によって給付額が決定します。子供が一人の場合は、100万3,600円(77万9,300円+22万4,300円)。 子供が二人の場合は、122万7,900円(77万9,300円+22万4,300円×2人)。 子供が三人の場合は、130万2,700円(77万9,300円+22万4,300円×2人+7万4,800円)。 子供が四人目以降の場合は、130万2,700円+4人以降の子供一人に付き、7万4,800円となります。

厚生年金加入者は基礎年金と厚生年金が貰える

厚生年金加入者が亡くなったときに、その遺族に対して支給される公的年金を遺族厚生年金と呼び、18歳未満の子供がいない人に対しても、支給対象となるのが最大の特徴です。主に、会社員の人が対象となる年金で、現在は遺族共済年金と一緒に一元化されています。また、公務員の人も対象になっているため、利用者が多い遺族年金といえます。 遺族厚生年金の条件と詳細は以下のとおりです。

給付条件

被保険者が、死亡または傷病の初診から5年以内に亡くなった人で、保険料納付期間が2/3以上あること。また、老齢厚生年金の受給資格が、25年以上ある人が亡くなった場合や、障害厚生年金(1級、2級)を受けられる人が死亡した場合であること。

給付対象

妻や18歳未満の子、孫(障害等級1級、2級の人は20歳未満まで)、そして55歳以上の夫、父母、祖父母(支給は60歳から)であること。

給付額

本来夫が受ける予定だった厚生年金の3/4。

支給期間

妻の場合、一生涯支給。ただし、夫の死亡時に妻の年齢が30歳未満、かつ子供がいない場合は5年間の支給となり、妻の年齢が40歳から65歳になるまでの期間は、58万4,500円が1年毎に加算。子供や孫の場合は、18歳の年度末まで(障害等級1級、2級の場合は20歳まで)とし、夫や父母、祖父母の場合は、60歳以降から一生涯とする。

妻の死亡時に夫も受け取れるようになった

従来の法律では、遺族基礎年金の支給規定は「子、又は18歳未満の子のある妻」となっていましたが、平成26年の4月から、「妻」という規定が「配偶者」に改正されました。18歳未満の子のある夫ついても、遺族基礎年金の支給対象になり、平成26年4月1日以降に妻が死亡した場合に限られるため、それより前に父子家庭であった場合は遺族基礎年金を受け取ることはできません。 一方、遺族厚生年金は従来と変わらず、子供のいない夫も年金を受給できますが、年齢条件があります。遺族厚生年金は、妻の死亡時に55歳以上であることや、妻に生計を維持されていたことなどの要件を満たす必要があります。 さらにこれらの要件を満たしていても、実際に年金を受け取るのは60歳になってからになります。(ただし、妻死亡時に55歳以上の夫であれば、60歳前でも遺族厚生年金を受け取ることが可能になりました。)

夫が遺族基礎年金を受給する場合の注意点

18歳未満の子がいないと受け取れない

遺族基礎年金を受給する場合、18歳未満の子(障害がある場合は20歳)がいないと受け取ることはできません。例えば、子供が何人かいる場合、そのうちの一人が成長し、18歳(20歳)になったとき、その子供の加算額は消失します。 よって、末子が18歳(20歳)になった時点で、遺族基礎年金の支給が終了するため、年金を受け取ることはできません。その他子供が死亡したり、養子に出た場合も同様になります。

年収制限がある

遺族基礎年金は、収入がある人でも妻の死亡時における年収額が、850万円未満なら受給することができます。ただし、妻の死亡時に年収が850万円以上ある人の場合は、妻に代わって子育てをするためや、妻の死亡後にその収入が維持できないと予想される場合であっても、遺族基礎年金は支給されません。さらに、遺族基礎年金の受給には、死亡者の保険料納付要件も問われます。 保険料納付要件とは、生前の保険料の納付期間や、免除期間等が一定以上あるかどうかということです。免除期間等は、申請して認定されることで保険料の支払いが猶予もしくは免除されていますが、遺族基礎年金の受給資格については、免除期期間中も納付したものとみなします。この保険料納付要件には、原則となる要件とそれに満たない特例となる要件があるので気をつけましょう。

原則となる要件

死亡日の前日において、死亡日の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間または保険料免除期間などが3分の2以上あること。

特例となる要件

平成28年4月1日より前に死亡した場合は、死亡日の前日において、死亡日の前々月までの直近の1年間に保険料の未納期間がないこと。 夫が遺族基礎年金を受給できる制度になっても、死亡した妻が保険料納付要件を満たしていない場合は、年金を受給することはできません。いざというときのために、配偶者の保険料納付要件を確認しておくことが大切でしょう。

夫が遺族厚生年金を受給する場合の注意点

年齢制限がある

子供がいる加入者が亡くなった場合、厚生年金保険から障害基礎年金に上乗せし、妻または子供が遺族厚生年金を受け取ることができます。ただし、子供がいない場合や、その他の遺族は遺族厚生年金だけを受け取ることが可能です。年金額については、報酬比例部分の3/4になります。遺族厚生年金を受給する要件については、次のとおりです。 ☑ 妻が死亡した時点で、55歳以上であること。 ☑ 厚生年金保険の加入者、もしくは受給者であること。(60歳以上65歳未満に亡くなった場合でも、日本国内に居住していれば、遺族は遺族厚生年金を受給することができます。) ☑ 遺族基礎年金と同じように、保険料納付についての条件を満たしていること。

受け取れるのは子が18歳になるまで

遺族基礎年金と遺族厚生年金では、支給される条件が異なります。子供がいる場合に年金が支給されるのが遺族基礎年金。一方子供がいない場合でも、年金が支給されるのが遺族厚生年金です。さらに、遺族基礎年金の支給は、子供が18歳になるまでと決められていますが、遺族厚生年金の支給については、遺族が死亡するまで受け取ることができ、支給される期間もそれぞれ異なります。

妻のみで夫には中高齢寡婦加算が適用されない

中高齢寡婦加算とは、一定の要件を満たした遺族となった、妻の遺族厚生年金に加算される、65歳までの有期年金で、妻のみで夫には支給されません。受給の要件については、「夫の死亡時、夫によって生計維持されていた妻であること」「長期要件による遺族厚生年金の場合は、夫の厚生年金被保険者期間が、20年以上あった場合」 さらに、「夫の死亡時に、妻が40歳以上、もしくは40歳のときに遺族基礎年金の支給が対象となる子供がいる場合」など、三つの条件を満たすことが必要です。中高年寡婦加算の受給期間は、次のとおりです。 ☑ 受給できる期間は40歳から65歳までの間で、遺族基礎年金の受給期間は支給停止となる。 ☑ 夫が死亡した際に、妻が40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を受給していない場合、中高齢寡婦加算は、夫が死亡したときから65歳になるまで支給されます。 ☑ 妻が40歳の時点で、遺族基礎年金の受給対象となる子供がいる場合は、夫の死亡が妻が40歳になる前でも、遺族厚生年金に対して、中高齢寡婦加算が加算されます。ただし、遺族基礎年金を受給している間は、40歳以降であっても中高齢寡婦加算は支給停止となります。 ☑ 妻が40歳になる前に、その子供が18歳になった理由で遺族基礎年金の受給が終了したときは、中高齢寡婦加算は支給されません。

遺族年金受給条件は知識として知っておこう

突然、家計を支える家族が亡くなってしまったら、残された家族はどうやって生活していくのか、誰もが不安になるでしょう。そんなとき、遺族年金の受給条件や仕組みを知っておけば、万が一に備えることができます。遺族年金のみで残された家族の生活費が全てカバーできる訳ではありませんが、生活の基盤を補うことは可能です。 遺族年金の支給額は、加入している社会保障制度や家族構成によって受け取れる支給額が異なります。もしものために、しっかりと受給条件の知識を学んで、残された家族が困らないよう、将来の不安を解消しましょう。