いざという時に焦らないように、遺族年金について知っておくことは大切です。遺族年金には対象者や受給額や受給期間など、さまざまな受給条件があります。そして手続きには必要書類など知っておくべきことがたくさんあるので、今のうちに確認しておきましょう。
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遺族基礎年金の基本
遺族基礎年金の目的
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者や厚生年金保険の被保険者、または被保険者であった方(老齢基礎年金の資格期間を満たした方)が亡くなったときに、その方の収入に頼って生計を維持していた遺族が受け取ることができる年金のことです。万が一の遺族補償の基本となります。 遺族基礎年金の目的は、残された遺族が生活に困らないようにするため。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、これらの年金の納付状況により、両方の年金が支給されるか、いずれかの年金が支給されることになります。また、被保険者であった方は、受給資格期間が25年以上あることが必要な要件です。
主な受給条件
国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある方が亡くなったときに、遺族基礎年金を受給することができます。ただし、亡くなった月の前々月までの国民年金の加入期間の2/3以上の保険料の納付があること、もしくは免除されていることが条件。 ただし、平成38年4月1日前の場合は、亡くなった日が65歳未満で、亡くなった月の前々月までの1年間のうちに保険料の滞納がなければ受給できます。
亡くなった方の条件について
遺族年金を受給するためには、亡くなった方が以下の4つの条件のうちのいずれかを満たしていることが必要です。 ☑ 1.国民年金に加入している方 ☑ 2.国民年金に加入していた方で住所は日本国内にあり、60歳以上65歳未満の方 ☑ 3.老齢基礎年金を受給中の方 ☑ 4.老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた方 上記の1と2の条件を満たすためには、保険料を確実に納付していたという事実が必要。確実に納付していたというのは、以下の2つの条件のいずれかを満たしているかどうかで判断されます。 ☑ 1.亡くなった日の2ヶ月前までの被保険者期間のうち、保険料の納付期間と保険料の免除期間の合計が2/3以上あること ☑ 2.亡くなった日の2ヶ月前までの1年間のうち、保険料の滞納がないこと
基礎年金の注意ポイント
遺族基礎年金の受給資格があるのは、国民年金に加入していた故人が以下の2つの項目を満たしていることが前提です。 ☑ 1.亡くなった2ヶ月前まで加入期間の2/3以上、保険料が納付(免除を含む)されていること。 ☑ 2.亡くなったときの2ヶ月前までの1年間のうち、保険料を滞納したことがないこと。
受給対象者の条件について
まずは、亡くなった方が条件を満たしていることが前提。そして受給の対象者になるのは、「子どもがいる亡くなった方の配偶者、またはその子ども」です。つまり、子どもがいる世帯のみ遺族基礎年金が支給されるということ。加えて、受給対象者は以下の2つの項目も満たしている必要があります。 ☑ 1.亡くなった方に頼り、生計が維持されていた。 ☑ 2.年度末で子どもが18歳未満(障害等級1級・2級の方は20歳未満)である。 家庭により子どもの数は異なるものの、すべての子どもの対象年齢を超えたら、遺族基礎年金の支給は終了します。
給付額と給付期間
給付額は、77万9,300円+子どもの加算により決定します。以下は、子どもの人数ごとの給付額の例です。 ☑ 1.子どもが1人:100万3,600円(77万9,300円+22万4,300円) ☑ 2.子どもが2人:122万7,900円(77万9,300円+22万4,300円×2人) ☑ 3.子どもが3人:130万2,700円(77万9,300円+22万4,300円×2人+7万4,800円) ☑ 4.子どもが4人目以降:年間130万2,700円+4人目以降の子ども1人につき7万4,800円 給付期間は、子どもが18歳になるまでです。具体的には、18歳の年度末である3月31日まで給付されることになります。
遺族厚生年金の基本
主な受給条件
遺族厚生年金を受給するためには、亡くなった方が厚生年金加入者であるということが前提。そして、以下の4つの項目のいずれかを満たしているということが主な受給条件です。 ☑ 1.亡くなった方が厚生年金加入者である。(保険料納付期間及び免除期間が、国民年金加入期間の2/3以上ある、もしくは平成38年3月31日までに亡くなった場合は、65歳未満であれば亡くなった日の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと。) ☑ 2.被保険者が亡くなったとき、または厚生年金加入中の傷病がもとになり、初診日から5年以内に亡くなった。 ☑ 3.1級または2級の障害厚生年金を受給している。 ☑ 4.老齢厚生年金を受給している、または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている。
厚生年金加入中の方が注意するポイント
厚生年金に加入中は、基本的には滞納ということはありませんが、厚生年金加入前に国民年金を滞納していた方は注意が必要。過去に滞納期間があっても、2年間(平成24年10月〜平成27年9月までに限り、10年前まで)であれば、遡って納付することが可能です。 滞納がないかを確認して、滞納があった場合は納めておいたほうがよいでしょう。自分が亡くなった後、残された家族が遺族年金を受け取れない可能性が出てきてしまいます。
遺族共済年金と一元化
平成27年10月1日に「被用者年金一元化法」が施工されたため、厚生年金と共済年金が一本化されました。かつて公務員や私立学校教職員が加入していた共済年金は廃止され、厚生年金に統合されました。 共済年金が廃止されたことにより、現在は国家公務員や地方公務員や私立学校教職員は、厚生年金に加入することになっています。 亡くなった方が、共済年金に加入していた期間中の年金も受給可能です。その分も含め、現代では、遺族厚生年金が支給されるということです。支給額については、それぞれの加入期間ごとで計算して決定します。
給付対象者と給付額
遺族厚生年金が給付される対象者は、亡くなった方の収入に頼って生計を維持していた方であるということが前提。以下の4つの給付対象者のうち、優先順位の高い方に遺族厚生年金が支給されます。 ☑ 1.亡くなった方の配偶者または子ども ☑ 2.父母 ☑ 3.孫(「子ども」と同じ制限がある) ☑ 4.祖父母 遺族基礎年金と異なるポイントは、子どもがいない配偶者でも受給できること。ただし、夫が亡くなった子どもがいない30歳未満の妻の場合、5年間だけしか受給することができません。また、父母や祖父母の場合は、55歳以上だった方が60歳になったときから受給できるという年齢条件があります。 子どもがいる配偶者または子どもは、遺族厚生年金と併せて遺族基礎年金も受給可能です。一方で、子どものいない配偶者は遺族基礎年金を受給できません。しかし、40歳以上の配偶者であれば、65歳になるまで遺族厚生年金に定額の中高齢寡婦加算が加算されて支給される場合があります。
給付額について
給付される年金額は、亡くなった方が受け取るはずだった報酬比例部分の3/4です。報酬比例部分の計算補法は、「短期要件」と「長期要件」の場合で異なります。 大まかに説明すると、「短期要件」とは加入期間が25年以下の方、「長期要件」は加入期間が25年以上で老齢厚生年金の受給資格を持つ方。一般的には短期要件で計算します。
短期要件とは
短期要件は、障害厚生年金に準じて計算します。加入期間が25年未満でも、25年として計算するので、加入歴が浅くても一定の金額です。 例えば、亡くなった方が受け取るはずの標準報酬月額が30万円だった場合は約48万円、標準報酬月額が40万円だった場合は約65万円となります。なお、長期要件は老齢厚生年金に準じて計算。給付額は、「ねんきん定期便」で報酬比例部分を確認しましょう。
遺族厚生年金の支給期間
遺族厚生年金の支給期間は、支給対象者により異なります。 ☑ 1.夫が亡くなったとき、30歳以上もしくは子どもがいる妻は一生涯(子どもがいる場合でも、30歳になる前に遺族基礎年金の受給権が消滅したら、消滅後5年で受給権が亡くなる) ☑ 2.夫が亡くなったとき、30歳未満の妻で、子どもがいない場合は5年間 ☑ 3.障害等級1級・2級に該当しない子どもと孫は18歳の年度末まで ☑ 4.障害等級1級・2級に該当する子どもと孫は20歳まで ☑ 5.夫と父母と祖父母は、60歳から 夫が亡くなったときに、妻の年齢が30歳未満であるか、30歳以上であるかで支給期間が大きく異なります。夫が亡くなったときに30歳未満で、尚且つ30歳の時点で遺族基礎年金の支給対象となる子どもがいない場合は、5年間で支給が打ち切りになってしまうからです。
遺族年金が受け取れない時の制度
寡婦年金給付のための条件
寡婦年金とは、子どもがいない女性が受給できる年金のことです。寡婦年金給付のための条件は以下のようになります。 ☑ 1.亡くなった夫の国民年金の第1号被保険者としての10年以上の保険料納付期間及び免除期間があること ☑ 2.亡くなった夫との婚姻期間が10年以上あったこと ☑ 3.亡くなった夫が障害基礎年金の受給者ではないこと ☑ 4.亡くなった夫が老齢基礎年金を受給したことがないこと ☑ 5.亡くなった当時、夫により生計を維持していた妻であること ☑ 6.妻が繰り上げで老齢基礎年金を受給していないこと 例えば、夫が自営業の妻は受給対象になります。また、配偶者が会社員だけど子どもがいない場合は、寡婦年金の代わりに遺族厚生年金を受給。遺族厚生年金と寡婦年金はどちらかしか受け取ることはできません。 さらに、寡婦が遺族厚生年金を受給する場合、中高齢寡婦加算をもらえます。中高齢寡婦加算は、40歳〜65歳までの間に遺族基礎年金の3/4が支給されるという、寡婦には設けられていない制度です。もし受給できるかどうか不安だという方は、社会保険労務士などの専門家に問い合わせてみると不安が解消されます。
寡婦年金の支給額と期間
寡婦年金の支給額は、亡くなった夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の3/4の額です。亡くなった月の前月までの第1号被保険者期間で計算します。第2号被保険者期間や第3号被保険者期間は対象外です。また、亡くなった夫が不可年金の付加保険料を払っていたときも加算されません。 寡婦年金が支給される期間は、60歳〜65歳になる前までの5年間。夫が亡くなったことが支給要件のため、妻が60歳になった以降に夫が亡くなったのであれば支給される期間は短くなり、65歳以降に亡くなったのであれば寡婦年金は支給されません。
寡婦年金額の計算例
第1号被保険者として国民年金保険料を25年間納付した場合の支給例(平成29年度)です。 「77万9,300円(老齢基礎年金)×(300月÷480月)=約48万7,000円」この計算式で算出された金額の3/4である約36万5,000円が、遺族となった妻に支給される金額になります。
死亡一時金の受給条件
家族が亡くなったときに受け取れるお金に「死亡一時金」があります。死亡一時金は1度だけもらえるお金。寡婦年金とは違うものですが目的は同じなので、死亡一時金を受け取るのであれば寡婦年金は受給できません。両方の受給条件を満たす場合は、どちらかを選択。死亡一時金の受給条件は以下のようになります。 ☑ 1.第1号被保険者として36ヶ月間保険料を納めていた家族が亡くなった ☑ 2.遺族基礎年金と寡婦年金、どちらの支給条件も満たしていない ☑ 3.亡くなった方と生計が同じであった ☑ 4.2年以内に請求を行った また、生死が不明の場合、失踪宣告の審判が確定した翌日から請求期限の2年が起算。生死が不明の場合でも、死亡一時金の申請を忘れないようにしましょう。
死亡一時金の対象者と受給額
死亡一時金が受給できるのは1回だけです。受給対象者は配偶者に限られていません。ただし優先順位があります。優先順位は以下の順です。 ☑ 1.配偶者 ☑ 2.子ども ☑ 3.父母 ☑ 4.孫 ☑ 5.祖父母 ☑ 6.兄弟姉妹 寡婦年金と死亡一時金のどちらを選ぶかは重要なポイントです。年金である寡婦年金を選んだほうが有利になることが多いですが、場合によっては死亡一時金を選んだほうが得になることもあります。 死亡一時金を選んだほうがお得な例は、寡婦年金の受給期間が短いとき。寡婦年金は65歳になると受け取れなくなるので、65歳になるまでに期間が短い方は、死亡一時金のほうが受け取る金額が多くなります。
死亡一時金の受給額
死亡一時金の受給額は、保険料を納付した月数に応じ、12万円〜32万円まで受給可能です。付加保険料を納付した月数が36ヶ月以上ある場合、8,500円が加算されます。
遺族年金の手続き
遺族基礎年金の窓口
遺族基礎年金の請求の手続きをするのは、市区町村役場の窓口になります。ただし、亡くなった日が国民年金第3号被保険者期間中であれば、住んでいる地域にある年金事務所または街角の年金相談センターです。 また、遺族基礎年金を請求するには、年金請求書を提出する必要がありますが、その年金請求書も年金事務所または街角の年金相談センターに備え付けてあります。 手続きをするには、必要な書類がいろいろあるので、事前に確認しておくようにしましょう。日本年金機構のサイトにて、手続きに必要な書類の確認をすることができます。 詳細はこちら
遺族厚生年金の窓口
会社員などの厚生年金に加入している方の遺族が受け取る遺族厚生年金の窓口は、各都道府県の年金事務所です。公務員の方も、共済年金が厚生年金と統一になったため、年金事務所が窓口になります。 年金事務所の所在地がわからない場合は、日本年金機構のホームページで確認できます。また、日本年金機構の「ねんきんダイヤル」でも、年金に関するさまざまな相談を受け付けているので、不明な点があれば利用してみましょう。 電話以外の方法で問い合わせをしたいなら、年金事務所の窓口で直接相談したり、文書で問い合わせをすることも可能です。いずれの方法であっても、家族であることを確認するための本人確認が必要なので、まずは電話で相談したほうがいいでしょう。耳が不自由な方は、FAXで相談することも可能です。 詳細はこちら
手続きに必要な共通書類
遺族年金をいざ申請にと行動を起こす前に、必要な書類を揃えておくことでスムーズに進めることができます。というのも、用意する書類が多いため、一つでも欠如すれば出戻りになるケースが多いためです。以下が手続きに必要な共通書類となります。 ☑ 1.年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付様式第105号) ☑ 2.年金手帳(提出できないならその理由書を提出する) ☑ 3.戸籍謄本及び記載事項証明書(亡くなった方との続柄及び請求者の氏名と生年月日の確認、受給権発生日以降〜提出日より6ヶ月以内に交付されたもの) ☑ 4.世帯全員の住民票のコピー ☑ 5.亡くなった方の住民票の除票(世帯全員の住民票のコピーに含まれていれば不要) ☑ 6.請求する方の収入が確認できる書類(所得証明書、課税・非課税証明書、源泉徴収票など) ☑ 7.子どもの収入が確認できる書類(義務教育終了前は不要、高等学校等在学中であれば、在学証明書もしくは学生証など) ☑ 8.市区町村長に提出した死亡診断書及び死体検案書などのコピーもしくは死亡届の記載事項証明書 ☑ 9.本人名義の受取先の金融機関の通帳など受取先金融機関の通帳等(カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された預金通帳またはキャッシュカードなどで、コピーも可。請求書に金融機関の証明を受けた場合は提出不要) ☑ 10.印鑑(認印も可) また、亡くなった原因が第三者行為の場合や、その他にも状況によって必要な書類が他にあるので、詳細は日本年金機構のホームページで確認するか、ねんきんダイヤルに問い合わせて確認しましょう。 詳細はこちら
手続きにかかる時間
遺族年金を受給するには、数多くの書類をすべて揃え、必要事項を記入しなければいけないので、手間と時間がかかります。そして、年金を請求してから受取までに、おおむね3〜4ヶ月ほど。場合によってはもっと時間がかかる可能性もあるのです。 自分で手続きをすることが難しいのであれば、委任状を提出して代理の方に手続きをしてもらうことも可能。有料にはなりますが、社会労務士がいる社会保険事務所に依頼することもできます。専門家に依頼したとして、不備なく手続きができたとしても、受給までには少なくとも3〜4ヶ月かかるというのは変わらないので、早めに手続きをするようにしましょう。
手続きの期限
手続きには期限があり、5年以内に遺族年金の申請をしなければいけません。受給権が発生してから5年以内の分は請求できますが、5年を超えてしまった年金は時効となり、受給権が消滅します。 ちなみに、遺族年金だけでなく、老齢年金、障害年金、未支給年金の時効も5年、死亡一時金・脱退一時金の時効は2年です。やむを得ない事情があり5年以内に申請できなかった場合は、その理由によっては時効の撤回申し立てをすることができます。
代行手続きの利用
手続きは原則として亡くなった方の妻や子どもが行いますが、委任状を提出すれば代理人が手続きを行うこともできます。例えば、国家資格を持っている社会労務士が所属している社会保険事務所などで年金手続き代行サービスを依頼することも可能です。 社会保険事務所に依頼するとおよそ5万円ほどの費用がかかることが多いようですが、慣れない複雑な手続きを行うのは大変であり、役所の窓口は基本的に平日しか開いていないので、仕事が忙しいという方もなかなか手続きができません。そのため、社会保険事務所に代行を依頼するというケースは多いようです。
いざという時に焦らず行動できるように確認しておこう
身内が亡くなるという自体は、突然やってきます。いざという時のために、焦らず行動できるよう、遺族年金について確認しておきましょう。 遺族基礎年金や遺族厚生年金の対象者・給付額・給付期間、遺族年金を受け取れないときの制度、請求する際の手続き方法など、それぞれのポイントをおさえておけば安心です。もし自分で手続きをするのが困難であれば、有料にはなりますが、社会保険事務所に代行を依頼しましょう。
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