一家の大黒柱が亡くなった後、遺族は生活費をカバーするために遺族年金を受給することになります。いざという時のためにも、今から遺族年金と税制の関係性をよく理解しておくことが重要です。非課税制度をうまく活用し、安心して年金生活を送りましょう。
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目次
遺族年金と税金の関係
遺族年金は基本的に非課税となる
国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった際にその遺族の方に対して支給されるのが、遺族年金です。遺族年金はそれまで家計を支えていた一家の大黒柱である家族が亡くなり、残された一家が生きていく上でなくてはならない生活費をカバーするために必要な年金制度です。 この年金は公的年金である国民年金や厚生年金から支給されており、国民年金に加入していた自営業者やフリーターの方が亡くなった場合は遺族基礎年金、会社員や公務員、私学教職員など厚生年金に加入していた方が亡くなった場合は遺族基礎年金と遺族厚生年金が給付されます。 一家の大黒柱に先立たれて今後の生活が不安な中、遺族にとって遺族年金が支給されるというのはありがたいことです。しかしその中でも心配なのが、受け取った年金に税金はかかるのかという点についてです。結論からお伝えすると、基本的に年金を受け取る際の所得税や相続税は一切かかりません。遺族年金の収入分については非課税扱いになると法で定められておりますので、どうぞご安心ください。
非課税に収入制限はない
遺族年金が非課税だと理解していても、支給される金額が高額になるケースだと課税対象になるのではないか、と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし遺族年金は非課税となる金額の上限は設定されておらず、全額が非課税となります。受給額がどれほど高額になったとしても、税金がかからないと定められているのです。 仮に遺族年金と合わせて老齢年金を受給している場合は、老齢年金として支給された部分に関してのみ所得税がかかりますので、遺族年金分には課税されません。
遺族年金は収入とみなさない
遺族年金が非課税扱いとなる根拠が、国民年金法と厚生年金法それぞれにおいて定められています。 国民年金法25条によると、「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢基礎年金及び付加年金については、この限りではない」とされています。 また、厚生年金保険法41条2項では「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りではない」とされています。この記載の中で「公課を課することができない」と明記されているので、遺族年金が非課税の対象となります。 遺族年金においては、いくら高額になったとしても非課税であり、収入はないという扱いになります。所得税や住民税などがかからない上に、国民健康保険料や介護保険料も低額になる可能性が高くなります。
死亡一時金や寡婦年金も非課税対象
所得税と相続税の両方が課税対象外となる年金には、以下のものがあります。 ☑ 寡婦年金 ☑死亡一時金 ☑ 遺族基礎年金 ☑ 遺族厚生年金(中高齢寡婦加算などの加算分を含む) これらの年金は一般的な国民年金や厚生年金から支給されるので、所得税や相続税などがかかりません。万が一の場合に備えて、覚えておきましょう。
確定申告や年末調整での申告が必要ない
支給された遺族年金は課税対象外ですので、そもそも確定申告をする必要がありません。お勤めの方であっても、年末調整の際の申告は不要です。 ただし遺族年金以外の所得がある方は、確定申告が必要になるケースがあります。例えば、給与以外の収入がある場合で年間38万円をオーバーしてしまうと、所得税・住民税の課税対象となります。また、一年の途中で退職して再就職先がまだ決まっていない方も、年末調整をしていないために確定申告が必要となります。
他の家族の扶養に入ることが可能
遺族年金を受給中であっても、生計を一にしている他の家族の扶養に入ることができます。扶養に入った後に遺族年金の受給額が減らされるのでは?と心配な方も多いかもしれませんが、遺族年金額は扶養に入ったことが原因で減額されることはありません。 扶養に入る条件としては、年間の所得が38万円以内(給与収入のみの場合は103万円以下)でなければなりませんのでその点は注意が必要です。パートやアルバイトなどによる収入とは別に、遺族年金分は所得としてカウントされませんので、たとえ遺族年金が高額になったとしても問題ありません。 扶養控除制度がありますので、他の家族の扶養に入ることでその家族の所得税や住民税が控除対象となり、結果として世帯全体の節税につながります。
年金暮らしにかかる税金の目安
所得税は158万円まで非課税
高齢になり年金暮らしが始まると、どのくらい所得税や住民税がかかるのかという点が気になるのではないかと思います。これについては、年齢によって金額設定が異なってきます。 まず収入が公的年金のみで65歳以上の方は、年金受給額が158万円までは所得税がかかりません。また、65歳未満の方については、非課税受給額を108万円以下と設定されています。 これらの金額を超えた場合は、超えた分の金額にのみ所得税がかかってきます。この対象者には日本年金機構より「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書が送付されるので、記入して忘れずに提出しなくてはいけません。万が一提出しなかった場合は控除が受けられなかったり、所得税率が2倍も割り増しになるなどデメリットばかりですので、申告書は忘れずに提出しましょう。 申告書の提出後は、毎月の年金支給額から社会保険料や所得税の基礎控除などを差し引き、それに所得税率と復興特別所得税率をかけて算出された金額を源泉徴収として差し引かれます。 このように、年齢によって設定された収入の上限金額を超えた方は年末調整が実施されないので、各自で確定申告する必要があります。しかし年金を受給中の高齢者には確定申告が負担になるため、平成23年分の所得税からは「確定申告不要制度」がスタートし、公的年金等の受給額の合計が400万円に満たない方や、公的年金等以外の所得額が20万円以下の方は確定申告が免除されることになりました。
住民税は125万円以下なら非課税
年金受給額が多くなればなるほど住民税の金額も大きくなります。しかし、住民税についても条件次第では非課税になるケースがあります。 住民税は、均等割と所得割の2つを合わせたものが徴収されます。均等割とは、納税義務のある方全員から均等に税金を徴収することを指します。この均等割は非課税の条件に当てはまる方以外の全員が、一定の金額の税金を納めています。 次に所得割ですが、これは納税義務のある方の所得によって住民税が決定されるというものです。所得が多ければ多いほど所得割の金額も大きくなります。 年金受給者の中でこれらの均等割と所得割の両方が非課税になる対象となるのは、前年の合計所得が125万円以下の方(給与収入だと204万4千円未満の方)と定められています。この対象者については、住民税の支払いが免除されます。
年金収入153万円で9600円
万が一の病気やケガに備え、医療にかかる費用を互いに負担し、支え合うための財源となる大切なものが国民健康保険税です。これは国民健康保険に加入している方を対象に徴収されるもので、世帯ごとに計算された被保険者全員の前年の所得や被保険数、加入期間、資産などに基づいて税額が決定します。 65歳以上75歳未満の方のうち、老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方で、年間の支給額が18万円以上の方は、国民健康保険税が徴収されます。その金額は、自治体によって異なります。 例えば65歳〜74歳までのひとり暮らしの方で年金収入が153万円以下で固定資産なしだと、国民健康保険税は9600円となります。
介護保険税は年額2万4200円
介護保険とは40歳以上の方を加入対象とした保険で、基本的には65歳以上の方が要支援・要介護の状態に認定されたのちに介護サービスを利用できるようにする制度です。現代社会は本格的な高齢化社会を迎え、介護が必要な高齢者の数も急激に増えています。核家族化や老々介護の問題も浮き彫りになり、家族だけでは介護が難しいのが現状です。こうした状況を緩和するため、社会全体で介護を支えるために新しく生まれた制度です。 被保険者の対象となるのは65歳以上の方のうち、国民健康保険税と同じく老齢もしくは退職、障害または死亡を支給事由とする年金を受給している方で、年間の支給額が18万円以上の方です。 例えば世帯全体が住民税非課税で、前年の合計所得額と課税年金の合計額が80万円以下の方の場合、介護保険税の年額は2万4200円となります。
扶養控除を受ければさらに安くなる
年金で暮らす高齢者にも、さまざまな税金がかかっきますが遺族年金については課税対象外ですので、公的年金が153万円以下であれば所得税や住民税、国民健康保険税、介護保険税を合わせて年間3万5000円程度に収まる計算となります。 さらに扶養控除を受けることで、世帯の所得税と住民税の負担が軽くなります。年金という収入があるだけで扶養に入れないと思い込みがちですが、要件さえ満たしていれば可能です。 税法上では、扶養の範囲を「6親等以内の血族と3親等以内の姻族」と定められており、生活の面倒をみてもらっている親族であること、また本人の年間の合計所得金額が38万円以下であれば扶養内に入ることができます。たとえ家族と離れて暮らしていたとしても、条件次第では扶養に入ることができます。 その条件とは、定期的に生活費を仕送りして生活を援助していると証明できることです。仕送りに際しての金額は特に定められていませんので、いくらからでも対象となります。仕送りした事実の証明には、振込控えや現金書留の控えなどが必要ですので忘れずに保管しておきましょう。 社会保険の被保険者の扶養親族と認められると、健康保険料を負担せずに保険給付を受給できます。これは扶養家族になった時の最大のメリットです。ただし、75歳以上の場合は後期高齢者医療制度の被保険者に当たりますので、扶養に入れることは不可能となりますので注意しましょう。 このように、扶養家族と認められると税法上でさまざまなメリットがあります。少しでも税負担を軽くするためにも、家族の扶養に入るという選択を考えてみることをおすすめします。
老後は家計を年金で賄って生活しよう
大切な家族を亡くして辛い気持ちの最中に、年金制度や税金に関する不安と向き合うのは骨の折れることです。しかし、遺族年金は非課税で、家族の扶養に入るとメリットがあるなど今後の生活を安心して送っていくためにも、遺族年金や公的年金と税制との関係をよく理解しておくことが必要です。 残された家族と安心した生活を送るためにも、可能であれば家族の扶養に入るなどして、非課税の制度を賢く活用しましょう。
エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
会計事務所の経営を通じ1,000社を超える顧客の税務/会計/保険/資産運用の相談に対応。
通常の代理店ではみれない顧客情報を扱っていることから、豊富な引出しを有し多くのお客さまから支持を集めている。