高額医療費制度とは。その特徴を理解して上手に利用するには

病気によっては高額な医療費用がかかることがあります。公的保険制度の社会保険には、医療機関に支払った金額がある一定の額を超えた場合は還付される高額医療費制度があります。この制度を利用すると自己負担額が少なくなるので家計への負担も少なくなります。

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高額医療費制度の特徴

自己負担が減る

高額医療費制度とは、入院などでかかった医療費のうち制度が定めている自己負担額を超えた分が健康保険組合などから還付されます。同一の医療機関などの窓口で支払った金額が月の初めから終わりまで一定額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度です。公的医療保険制度のひとつで、1973年より開始しています。 自己負担額の計算方法は収入や年齢で変化します。70歳未満、70歳以上75歳未満、75歳以上では計算法が異なるのです。そのほか70歳以上の場合は所得額により4つの段階に分けられ、70歳未満は所得額により上位所得者、一般、低所得者の3つの段階に区別されます。そして所得税の医療費控除と違い、生命保険会社の保険金給付は高額医療費制度の算出基準には含まれません。

先進医療は高額医療費に含まれない

先進医療は厚生労働省が認める「ある程度の実績がある新しい治療法」のこと。保険の対象となっていないため高額な治療法もあります。がん治療の一種である「重粒子線治療」は約300万円、「陽子線治療」は約260万円かかるといわれています。しかしこれらの先進医療を行うことができる病院は数が限られているのが現状です。望んでも受けることができるとは限らない治療法となっています。

健康保険組合により更に減額する

健康保険組合によって自己負担額がさらに減額するところもあります。組合で独自に定める「付加給付」と呼ばれるものです。

協会けんぽと組合健保

社会保険である健康保険には「協会けんぽ」と「組合健保」の2種類が存在。中小企業に多い「協会けんぽ」は全国健康保険協会が運営しています。協会が都道府県別に料率を設定、その料率を標準月額報酬額にかけて保険料を算出するのです。 組合健保は700人以上の社員がいる企業、または複数の会社が共同で設立し3,000人以上の被保険者がいる大企業、グループ会社などが健保組合を設立しています。保険料率は健保組合ごとに設定、協会けんぽより保険料は安く設定。そして組合健保には独自の付加給付を導入しているところがあります。付加給付により自己負担額を補う制度で、組合によっては自己負担がないところもあります。

70歳以上も申請可能

70歳以上でも住民税が非課税となっている低所得者の方は加入している健康保険組合などに、高額療養費限度額適用認定証の申請を行います。

70歳以上の限度額(2017年8月から2018年7月まで)

☑ 現役並み所得者(年収約370万) 外来 5万7,600円 世帯ごと8万100円+(医療費—26万7,000円)×1% ☑ 一般(年収156万円から約370万円) 外来 1万4,000円(年間の上限14万4,000円) 世帯ごと 5万7,600円 ☑ 住民非課税世帯 外来 8,000円 世帯ごと 24,600円 ☑ 住民非課税世帯  (年金年収80万円以下) 外来 8,000円 世帯ごと 1万5,000円 この限度額は2018年8月度からは上限額が変わります。現役並みの方は年収により3つの区分に分けられ外来の上限額はなくなるのです。

70歳以上の限度額(2018年8月から)

☑ 現役並み所得者(年収 約1,160万円以上) 2万5,200円+(医療費-84,200)×1% ☑ 現役並み所得者 (年収 約770万円から約1,160万円) 1万6,700円+(医療費-55,800)×1% ☑ 現役並み所得者 (年収 約370万円から約770万円) 8万100円+(医療費—26万7,000円)×1% ☑ 一般 (年収 156万円から約370万円) 外来 18,000万円(年間上限額 14万4,000円) 世帯ごと 5万7,600円 外来 8,000円 世帯ごと 2万4,600円 ☑ 住民非課税世帯   (年金収入80万以下など) 外来 8,000円 世帯ごと 1万5,000円 となります。 70歳以上で低所得ではない方は高額療養費限度額適用認定証の申請は必要ありません。保険証と高齢受給者証もしくは、後記高齢者医療保険証を窓口に提示するだけで、自動的に医療費から高額療養費が差し引かれます。

外来のみでも可能

2012年4月からは外来のみでも高額療養制度が利用できるようになりました。ただし、同じ病院にかかっていても外来と入院は区別します。70歳未満の被保険者、70歳以上の低所得者はあらかじめ申請し高額療養費限度額適用認定証の給付を受けます。「限度額適用証」は高額療養費限度額適用認定証の略です。 交付された限度額適用証を医療機関の窓口へ提示すると、自己負担額の限度額のみを支払うことで済みます。これは現物給付化というものです。複数の診療科を受診、長期の通院、医療技術の発達による外来での簡単な手術などにより外来診療も医療費の自己負担が高額となるケースがあります。負担を軽減するためにも高額療養制度を利用しましょう。

事前申請可能

70歳以下の人の場合、入院前に「限度額適用認定証」を申請。限度額適用認定証を病院の窓口で提示することで支払いは自己負担限度額までになります。支払いをした後に申請をした場合は、支払いした金額から自己負担限度額を差し引いた金額が還付されるのです。この限定額適用認定証の有効期限は1年となります。1年が経過したら再発行の手続きが必要です。 事後に手続きする場合は、まず医療機関で医療費用を支払います。そのあと加入している保険組合や共済組合など各保険組合に申請します。保険組合の中には「診療報酬明細書」をもとに自動的に払い戻しになり申請は不要となるところもあるので確認しましょう。

高額医療費制度の注意点

世帯単位で医療費を合算可能

高額医療費制度には、同一の世帯の家族の医療費が合算できる「世帯合算」という制度があります。一人の医療費では高額医療費の限度額に達していなくても、家族の医療費を合算した額が限度額を超えると高額療養費の対象になります。 「世帯」とは、同じ公的医療保険に加入している被保険者と被扶養者のことです。単身赴任などで同居していない「夫」と「妻・子供」も同じ公的医療保険の被保険者・被扶養者であれば世帯合算は可能になります。 自己負担額の上限は平均的な会社員の所得の場合は1ヶ月の自己負担額は約8万円です。3割負担の場合、1ヶ月に自己負担額21,000円を超える医療費の支払いをした人が複数人いる場合、合計して申請することが可能となります。

世帯合算の注意点

ただし、75歳以上の人と、75歳未満の人を合算することはできません。75歳以上の人は後期高齢者医療制度の対象となり、通常の健康保険と異なる公的医療保険の対象となるからです。それから、夫婦共働きで別々の健康保険組合に加入している場合も世帯合算はできません。

支給額に上限はない

保険診療が対象となる高額療養費制度の支給額に上限はありません。何度申請しても回数、支給額に制限は設けられていないのです。 一年に3ヶ月以上、高額療養費の支給を受けると、4回目以降は限度額の引き下げ対象になります。「多数回該当」と呼ばれるもので、70歳未満の一般的な家庭の場合44,400円が上限になるのです。2年前までさかのぼり適用することができます。

支給額に上限なし

長期にわたって治療が必要な病気の場合、経済的に負担が大きくなります。患者さんと家族の負担を減らすために3つの疾病については、特例として自己負担限度額が10,000円に減額、その額を超えた分が高額療養費となります。「高額長期疾病にわたる特例」と呼ばれるものです。 高額長期疾病は特例疾病ともよばれ、厚生労働大臣が定める治療で費用が著しく高額な治療を長期間にわたり続けなければならないことが条件となっています。

対象となる疾病

☑ 人工腎臓を実施している慢性腎不全 ☑ 血漿分画製剤を投与している先天性血液凝固第?因子障害または先天性血液凝固第?因子障害(血友病) ☑ 抗ウイルス剤を投与している後天性免疫不全症候群(HIV感染を含み、厚生労働大臣の定める者に係るものに限る。) ただし、人工透析については上位所得者の自己負担額は2万円となります。血友病、後天性免疫不全症候群については、自己負担額の上限のすべてを公費で負担。患者さんへの負担がありません。 特例を受けるには健康保険組合などに申請し「健康保険特定疾病療養受療証」の給付を受けます。血友病と後天性免疫不全症候群の方は、都道府県に「先天性血液凝固障害等医療受給者証」の交付を受けるための申請が必要です。

過去の医療費も申請可能

高額医療費制度は還付手続きか限度額適用認定証の給付の2種類。還付手続きの期限は「2年間」となります。診療月の翌月1日から2年間のあいだに行わなければなりません。そして高額医療費制度は過去の医療費も申請できます。しかし申請できるのは過去2年までの医療費です。 還付手続きを選択した場合、注意しなければならないことがあります。がん治療などで毎月の支払額が一括で医療機関に支払うことができない場合、分割という方法も可能。しかしこの分割方法も2年以内で完済できるようにしないと還付される額が戻ってこない、実際戻ってくるはずの額より少ないといったことがあります。

高額医療資金貸付制度もあります

高額医療費を請求しても、還付までには3ヶ月から4ヶ月かかります。そのあいだ高額な治療費を支払わなければなりません。医療費に充てる資金として無利子で「高額医療費支給の見込み額の8割相当額」を貸付ける制度があります。 国民健康保険の場合は高額療養費の9割相当額を無利子で貸してもらうことが可能です。ただし、市区町村によっては8割相当額のところや貸付制度のないところもあります。貸付制度を受けるには保険料の滞納がないことが条件です。

返済について

高額療養費の給付金を返済に充て、残りの金額が支給請求書で指定した銀行口座に振り込まれます。

医療費控除の特徴

税金の負担が減る

所得税法施行令207条に定められる医療行為に関する正味支出医療費が医療費控除の対象となります。対象となる年の1月1日から12月31日までの1年間に一定額以上の医療費を支払った場合、確定申告により所得税が軽減される制度。支払った医療費が10万円(所得が200万円未満の方は総所得金額の5%)を超えて支払った分です。

医療費控除の算出計算式

支払った医療費-保険金などで補てんされた金額-10万円(または所得が200万円未満の場合、総所得金額の5%)=医療費控除の対象額 控除の上限は200万円です。健康保険から支給されたものや生命保険、損害保険などから支払われたものは差し引かなければなりません。正味支出医療費のみが医療費控除の対象となります。

出産でも申請可能

医療費控除は「自己、自己と生計を一にする配偶者や親族」の医療費が対象になります。医師の診察や治療を受けることが必要とされるものが対象です。

医療控除の対象となるもの

☑ 妊婦健診費 ☑ 入院費・分娩費 ☑ 陣痛が始まったときのタクシー代 ☑ 人工授精にかかる費用 ☑ 不妊治療の費用

医療費控除の対象にならないもの

☑ 妊娠検査薬 ☑ 無痛分娩講座などの出席に関するもの ☑ 妊婦用下着、パジャマの費用 ☑ 里帰り出産の帰省するための交通費 などは医療費控除の対象にはなりません。

通院費用も申請可能

電車やバスなどの公共交通機関を利用しての通院が難しい場合、タクシーを利用することが考えられます。このタクシー代も医療費控除の対象として申請も可能です。また、通院に付き添いが必要な子供や高齢者の付き添いの人の交通費も控除の対象になります。

自家用車は対象にならない

通院のため自家用車を使用するときのガソリン代、駐車場代は交通費に含まれません。医療費控除の対象となるのは医師などの診察を受けるために電車代やバス代など人的役務の提供の対価として支払われるものになります。 自家用車が医療費控除の対象にならないのは、治療のために使われた事実が確かめにくいからです。違う目的で使用した交通費を医療費控除として申請する可能性も考えられます。

医療費控除の対象外のもの

身の回り品の購入費用

医療費の控除の対象となるのは、直接医療行為に関係するものです。医師の治療に関係のないパジャマ・洗面道具や冷蔵庫やテレビの賃貸料や電気料などは医療費控除の対象とはなりません。傷病の状態によっては6ヶ月以上も寝たきり状態で紙おむつを使用する場合もあります。この場合の紙おむつ代は対象です。この場合、医師が発行する「おむつ使用証明書」そして「おむつの領収書」を確定申告の際に添付します。 ただし、病院によっては指定のパジャマを着用しなければならない場合があります。このパジャマのクリーニング代は医療費控除の対象となるのです。ベッドのシーツなどのリネン関係のクリーニング代も医療費控除の対象となりますが、パジャマや下着のクリーニング代は対象外となります。

病院食以外は対象外

入院すると、1日3度の病院食がだされます。食事は入院費に含まれるものなので医療費控除の対象となります。しかし、食堂を利用したり出前をとったりしたものについては医療費控除の対象外です。

医師や看護師への謝礼

医師や歯科医師の診察や治療は医療費控除の対象ですが、健康診断や医師、看護師への謝礼は医療費控除の対象外です。近年は謝礼を断る病院が増えています。 診察、治療など医療行為に必要な費用に対して医療費控除は認められています。しかし謝礼は治療費ではないので金額に関わらず控除の対象とはならないのです。また、看護師さんへの差し入れも医療費控除の対象外となります。医療行為に直接関係がないからです。

個室を希望した際のベッド代金

治療する上で医師が必要と判断し、個室に入った場合は医療費控除の対象となりますが、他人と一緒の部屋は落ち着かないなど、本人または家族の希望で個室を希望した場合の差額ベッド代金は医療費控除の対象とはなりません。

個室しか空きベッドがなかった場合

急な入院の場合、個室しか空いておらず仕方なく個室に入院する場合も。その際、差額ベッド代が必要と病院から「同意書」へのサインを求められます。同意書を提出していると医療費控除は受けられないということはありません。申告の際に病院から空き部屋がなく個室に入るように指示されたものと伝えるだけで医療費控除の対象となります。 差額ベッド代での病院とトラブルになるケースがあります。そのようなときは加入している健康保険組合や医療機関の相談窓口へ問い合わせてみましょう。

付添人の心づけ

家政婦さんなどに療養上の世話をお願いした場合の所定の料金は医療費控除の対象となります。しかし、料金以外の心づけなどは医療費控除の対象とはなりません。また、付き添い人用に貸布団を借りる場合の貸布団代も医療費控除の対象外となります。 そのほか、家族、親類に付き添いを依頼し付き添い料としてお金を支払っても医療費控除の対象外です。家族や親類の場合、療養上の世話といっても金額を算定する根拠が難しいという理由があげられます。また、付き添いの家族の食事代ですがこちらも治療とは関係がありませんので医療費控除の対象外です。

制度を上手に使おう

高額な療費は家計の負担になります。公的医療保険である社会保険では、家計への負担を減らし安心して治療に専念できるように自己負担額の上限を定めています。高額療養費制度とよばれ年齢や収入により自己負担額の計算方法と上限が異なりますが、誰でも利用できる制度です。 高額になることが見込まれる外来診察でも利用できるようになった高額療養制度。事前の申請が可能で、申請すると「限度額適用認定証」が交付されます。窓口では自己負担額のみの支払いとなります。怪我や病気で高額の医療費がかかるときは、高額療養費制度を上手に利用し家計の負担が少なくなるようにしましょう。