家族の生活を支えてくれている人が亡くなったときに、生活に困らないように支給されるのが遺族年金。遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。それぞれの特徴を理解して、実際にはいくらもらえるのかを把握しましょう。
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目次
家族が亡くなった時の年金
遺族厚生年金はどんなもの
遺族厚生年金が支給される条件
遺族厚生年金は、厚生年金に加入している会社員などが死亡したときや、厚生年金加入中にケガや病気で診察を受け、その傷病が原因で死亡したときに、生計を維持されていた家族に支給されるお金のことです。ただし、国民年金の加入期間のうち、2/3の期間の年金保険料の支払いがされていることが条件です。 現在加入中でない場合でも、支給されることがあります。これには、老齢基礎年金を受給するために必要な年金保険料の支払期間25年を満たさなければなりません。この期間のことを、受給資格期間といいます。 受給資格期間は、厚生年金や国民年金の加入期間を通算した期間です。ただし、遺族厚生年金を受給するには、厚生年金の加入期間として最低1ヶ月以上が必要です。25年の年金保険料の支払いが1年でも滞納し、25年に満たない場合は、受給資格期間としては認められないので注意してください。 障害等級が1級または2級で、障害厚生年金の受給権者が死亡したときも、遺族に障害厚生年金が支給されます。
遺族厚生年金を受給する権利のある人
遺族厚生年金を受給できる人は、死亡した人に生計が維持されていたことと、生計が同一であったことが前提で、遺族厚生年金を受給できる遺族の優先順位のうち高いものから、子のいる配偶者、子、子のいない配偶者です。この中で、受給する権利のある人がいない場合は、死亡した人の父母、孫、祖父母に受給する権利が移ります。 受給できる人が死亡した人の妻である場合、30歳未満の子のいない人は、5年間に限って支給されます。30歳以上の人は、一生涯支給されることになります。受給できる人が子や孫である場合は、年齢が18歳までであること、障害年金の等級が1級または2級の人は、20歳までであることが条件です。それぞれの年齢に到達すると、年金の支給が停止されます。 受給できる人が死亡した人の夫、父母、祖父母の場合は、55歳以上であることが条件で、いずれの人も60歳からの支給となります。
遺族年金と障害年金の違い
遺族年金は、年金加入者が亡くなってしまったときに、遺族の生活を保障するために遺族に支給される年金。それに対して、障害年金は年金加入者が障害を負って、働けなくなったことで収入が減ったり、なくなったりしたときに、本人に支給される年金です。 遺族年金も障害年金も、それぞれ基礎年金部分と厚生年金部分があり、これら二つの年金の共通点です。遺族年金は、年金の被保険者であった人の遺族に支給されて、障害年金は障害を負った本人に支給され、これら二つの年金の異なる点となります。
遺族基礎年金が払われる条件
遺族基礎年金は、国民年金に加入している人に対しての年金です。厚生年金などの公的年金に加入している人は、同時に国民年金にも加入していることになるので、支給条件の整った全ての公的年金の被保険者が、対象となります。 年金の被保険者または被保険者であった人の支給要件は、老齢基礎年金保険料を支払った期間が、25年以上の受給資格期間を満たしていること。または、死亡した時点での加入していた期間の2/3の年金保険料の支払いが済んでいることです。 遺族基礎年金は、年金の被保険者が死亡したときに、被保険者であった人の18歳未満または、障害の等級が1級または2級の20歳までの子どものいる配偶者か、同様の年齢条件の子どもに支給されます。子どもに支給される場合は、婚姻していないことが条件です。 配偶者と子どものいずれに支給される場合であっても、被保険者であった人に生計を維持されていたことが前提です。また、支給されるのは子どもが18歳までで、障害がある場合は20歳までとなります。
いくら受け取ることができるか
遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、条件を満たせばその両方が支給されます。そのうちの遺族基礎年金の受け取れる金額は、子どもの人数によって変わります。 平成29年4月分からの数字として、具体的には77万9,300円に子の加算がプラスされます。子の加算とは、第1子、第2子まではそれぞれ22万4,300円ずつ、第3子以降は7万4,800円が加算されます。たとえば、子どもが3人いる場合は、77万9,300+22万4,300×2+7万4,800=130万2,700で、年間の遺族基礎年金の支給額は130万2,700円となります。 死亡した人が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金も受け取れます。遺族厚生年金は、個人によって支払った年金保険料の金額が異なるので、受け取れる年金の金額も個人によって異なりますが、おおまかに考えて、厚生年金の被保険者が受け取る予定であった老齢厚生年金額の4分の3の金額が、遺族に支給されます。
遺族厚生年金の配給額の確認方法
いくら受け取れるか計算
家族の生計を維持している厚生年金の被保険者が、死亡してしまった場合の遺族厚生年金の金額。これは、定期的に自宅に送られてくる年金定期便で、シミュレーションできます。 年金定期便の中に、これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額という項目があり、金額が記入されています。それから、これまでの年金加入期間という表の中に、厚生年金保険の加入月数が記入されています。これら二つの数字をもとに、計算ができるのです。 年金支給額の計算式は、加入実績の老齢厚生年金額÷加入月数×25年(300)×3/4です。たとえば、加入実績の老齢厚生年金額(年額)が100万円で、加入月数240(20年)として計算すると、100÷240×300×3/4=93万7,500円となります。
加入期間が短いときの措置
考え方として通常は、厚生年金の被保険者が受け取る予定であった厚生老齢年金額の3/4の金額が遺族に支給され、これまでに支払った保険料の金額が反映されることになります。しかし、厚生年金の加入年数が少ない場合、遺族厚生年金の配給額は、非常に少ないものとなってしまいます。実際に計算されるときは、これを補う特別措置がとられています。 特別措置として、厚生年金の加入期間が25年未満の被保険者が死亡したときは、25年の加入期間があるとみなして計算されることになっています。たとえば、厚生年金の加入期間が5年しかなくても、20年をプラスして計算してもらえるのです。
遺族年金だけで生活ができない場合
遺族年金と合わせて生活費を養う
生計を維持している厚生年金の被保険者が死亡したときに、遺族に支給される年金額として、死亡したときの年齢が40歳で年収600万円とすると、だいたいの目安としての遺族厚生年金の支給額は、年に50万円程度。1ヶ月あたりにすると、およそ40,000円になります。 遺された遺族が妻と18歳未満の子どもであるときは、遺族基礎年金も支給されます。たとえば、子どもが二人の場合の遺族基礎年金の支給額は、1ヶ月あたりおよそ10万円で、遺族厚生年金と合計しても14万円程度です。遺族基礎年金は、子どもが18歳になるともらえなくなります。 18歳未満の子どものいない妻が40歳になると、中高齢寡婦加算というお金が支給され、その金額は年間58万5,100円で、1ヶ月あたりおよそ49,000円程度です。これは、老齢基礎年金を受け取ることができる65歳まで支給されます。 18歳未満の子どもがいるあいだでも、月額14万円程度、子どもが18歳になったら中高齢寡婦加算を入れて、月額9万円程度です。非常に低い金額なので、これではとても生活ができません。どこかの会社にパートなどで雇ってもらい、働くことで収入を得る必要がありそうです。 ちなみに、遺族年金は非課税で、収入としての金額にカウントされません。働いて収入を得た場合でも、年金以外の収入にのみ課税されるので、税制面では非常に優遇されているといえます。
事前に個人年金や就業不能保険に加入
遺族年金で生活に足りない分は、働いて収入を補えば、生活はできるようになります。しかし、もし病気やケガで働けなくなったら、たちまち生活ができなくなってしまいます。 やはり遺族年金だけに頼ることはかなり危険で、もしもの場合を考えて、事前に備えておくことが重要です。それには、まず1ヶ月あたりの必要な生活費を想定し、その生活費から遺族厚生年金などで支給される金額を引けば、備えるべき金額が出てきます。 働けなくなったときの備えとしては、就業不能保険を活用してもいいでしょう。就業不能保険は、働けなくなったときの収入を保障します。働けなくなったときに、毎月決まった金額が支給されるので、備えるべき金額が支給されるように、保険に加入しておくとよいでしょう。 就業不能保険が支給されるのは、長くても70歳までです。65歳になると老齢基礎年金が支給されるので、遺族厚生年金と合わせて足りない分を補うため、個人年金に加入することも方法の一つです。
残された家族のために
家族の生活を支える人が、ある日突然亡くなってしまうことがあります。遺された家族にとっては、それでも生活をしていかなければなりません。自分自身が健康で生きているうちに、家族のために何をすればよいのかしっかりと考える必要があります。 遺族年金は、公的な生命保険と考えることができます。事前に、どれくらい支給されるかを把握することで、あとどれくらいの金額で生活できるのかがわかります。充分に生活できるだけの貯蓄ができればいいのですが、現実的には生活に足りない分を、家族が受け取れる生命保険に加入するなどして、備えておくとよいでしょう。
エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
会計事務所の経営を通じ1,000社を超える顧客の税務/会計/保険/資産運用の相談に対応。
通常の代理店ではみれない顧客情報を扱っていることから、豊富な引出しを有し多くのお客さまから支持を集めている。