パートが厚生年金や健康保険の社会保険に加入するためには、定められている条件を満たしている必要があります。また、社会保険に加入することでメリットもありますが、デメリットもあるので、それらを知ったうえで加入について検討したほうがいいでしょう。
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パートの社会保険の加入条件
1週間の所定労働時間が一般社員の3/4以上である
1週間の所定労働時間が一般社員の3/4以上の場合、パート等であっても厚生年金保険・健康保険等の社会保険の被保険者になります。この場合、パートであっても常時使用にあたるため加入義務となるのです。 所定労働時間が一般社員の3/4を満たしていなくても、事業主などに事情を聴取したり、タイムカードなどの書類の確認した結果によっては、加入義務となる場合もあります。例えば、残業等を除く基本となる実際の労働時間が直近2ヶ月において一般社員の3/4を満たしている場合で、今後も同じ状態が続くことが見込まれている場合は、所定労働時間が一般社員の3/4を満たしているものとして取り扱われるのです。
1ヶ月の所定労働日数が一般社員の3/4以上である
1ヶ月の所定労働日数が一般社員の3/4以上である場合、パート等であっても厚生年金保険・健康保険等の社会保険の被保険者になります。1週間の所定労働時間が一般社員の3/4以上の場合も同様ですが、パートであっても常時使用にあたるため加入義務となるのです。 1週間の所定労働日数が一般社員の3/4を満たしていなくても、事業主等の事情聴取やタイムカード等の書類の確認により、残業等を除いた実際の労働日数が直近2月で3/4を満たしており、今後も同じ状態が続くことが見込まれていれば、3/4を満たしているものとされます。
例外もある
2ヶ月以内の雇用期間を定めて雇用されるパート等の場合は例外です。契約期間が2ヶ月以内に限定されていて更新がない場合は、一般社員の3/4以上の1週間の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数だったとしても、社会保険の適用対象外となります。
所定労働時間や所定労働日数が確認できない場合
1週間の所定労働時間や1ヶ月の所定労働日数は、就業規則や雇用契約書などで明示的に確認し、社会保険の適用対象になるかどうかを判断します。しかし、就業規則や雇用契約書などで明示的に確認できない場合は、残業等を除いた実際の労働時間や労働日数を事業主等から事情聴取したり、タイムカードなどの書類で確認し、個別に判断されるのです。
年齢が70歳未満である
70歳以上は厚生年金に加入できないと定められているので、年齢が70歳未満であるということが厚生年金の加入条件です。もし会社に勤務し続けていたとしても、70歳になったら(正式には70歳の誕生日の前日)に厚生年金を脱退します。 しかし例外として、70歳以上であったとしても、老齢年金を受け取る資格を満たしていない場合(年金の受給資格期間が足りない場合)は、満たせるまでの間、任意で厚生年金に加入することが可能。任意で加入できる高齢任意加入被保険者は、会社が厚生年金の適用事業所かどうかで手続きや保険料の負担に差が出ます。
高齢任意加入被保険者について
70歳以上であっても任意で厚生年金に加入できるのが高齢任意加入被保険者。老齢・退職が支給事由の年金たる給付で、政令で定められている給付の受給権がないものが、受給資格期間を満たすまで任意で加入できるとされています。受給資格期間とは、年金をもらえる最低限の条件とされている「原則25年の年金加入期間」のこと。そして、政令で定められている給付とは以下の6つのことです。 ☑1. 老齢厚生年金 ☑2. 老齢基礎年金 ☑3. 退職共済年金 ☑4. 旧国民年金法、旧厚生年金法、旧船員保険法等による老齢年金、通算老齢年金 ☑5. 恩給法による退職が支給事由の年金たる給付 ☑6. 国会議員互助年金法による普通退職年金
厚生年金に加入できるのはいつから?
厚生年金の加入条件は、70歳未満であることが年齢の上限として定められていますが、いつから加入できるかという年齢の下限については定められていません。一方で、国民年金は20歳から加入できるという年齢の下限が定められています。 厚生年金は会社に勤めている方のための年金制度なので、会社に入社した日が加入日になります。労働基準法では中学生以下は働けないとなっているので、基本的には中学を卒業してすぐの15歳から厚生年金に加入できるといえます。ただし子役やモデルとしてなど、赤ちゃんや子どもが働く場合は事情が変わり、契約次第ということになるでしょう。
会社や法人の従業員数が501名以上である
平成28年(2016年)10月から、会社や法人の従業員数が501名以上の場合、パートなどの短時間労働者の方に対して社会保険の適用範囲が拡大されました。さらに法律改正により、平成29年(2017年)4月から、従業員数が500名以下の場合でも条件によっては社会保険の適用となる範囲が拡大されたのです。 会社や法人の従業員数が500名以下の場合、適用しようとしている会社や法人が、「従業員の過半数で組織する労働組合に社会保険加入の同意を得る」もしくは「従業員の過半数と代表するもの(事業主)の同意を得る」ことができたうえで、年金機構に申し出をすることで、要件を満たすことになりました。
学生ではない労働者
社会保険の加入条件の1つに、「学生ではない労働者である」ということがあります。大学、高等学校、専修学校、就業年限が1年以上の過程である各種学校等に在籍する生徒・学生は適用対象外になります。 ただし、大学の夜間学部、高等学校の夜間等の定時制、休学中の学生は社会保険の適用対象です。また、卒業見込証明書を有するもので、卒業前に就職して卒業後も引き続き同じ会社や法人に勤務する予定であれば適用対象になります。
雇用期間が1年以上の見込みである
雇用期間が1年以上の見込みであることも社会保険の加入条件。又は雇用期間が定められていない、もしくは雇用期間は1年未満であるが更新等によって1年以上雇用された実績がある場合も適用対象者です。雇用期間についての条件の詳細は以下のようになります。 ☑1. 雇用期間の定めがなく雇用されている場合、継続して1年以上の見込みであると取り扱われる。 ☑2. 雇用期間が1年以上の場合、継続して1年以上の見込みであると取り扱われる。 ☑3. 雇用期間が1年未満であっても、「雇用契約書に契約更新される旨もしくは更新される可能性がある旨が明示されている」もしくは「雇用契約により雇用されたものについて、更新等により1年以上雇用された実績がある」という場合は、継続して1年以上の見込みであると取り扱われる。 ☑4. 当時は継続して1年以上と見込まれなかったとしても、その後継続して1年以上の見込みであるとなったら、その時点から継続して1年以上の見込みであると取り扱われる。
年収が106万円以上である
賃金が月額88,000円以上であることというのも社会保険の加入条件。年収でいうと106万円以上であるということになります。この額には残業代や交通費などは含みません。1ヶ月の賃金から除外となる対象には以下のものがあります。 ☑1. 臨時に支払われる賃金(結婚手当など) ☑2. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) ☑3. 時間外労働、休日労働、深夜労働などに支払われる賃金(割増賃金など) ☑4. 最低賃金法で算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、家族手当、通勤手当) また、報酬が月給や週給のように一定の期間で定められている場合、被保険者の資格を取得した日の現在の報酬の額を、その期間の総日数で割った額の30倍にあたる額が報酬月額となります。
1週間の勤務時間が20時間以上である
残業を除く1週間の勤務時間が20時間以上であることも条件です。この勤務時間とは、就業規則や雇用契約書により、1週間に勤務すべきこととされている時間のことをいいます。 勤務時間が週単位で定まっていない場合、1ヶ月単位で定められている場合は、1ヶ月の勤務時間を52/12割って算出。1年単位で定められている場合は、1年の勤務時間を52で割って算出。1週間の勤務時間が変動する場合は、平均によって算出します。
勤務時間が20時間未満でも適用になる場合がある
事業主に対する事情聴取もしくはタイムカードなどの書類の確認により、勤務時間が直近2ヶ月で一週間20時間以上であり、今後も同様の状態が続くことが見込まれるとされた場合、勤務時間が1週間20時間以上であるものとして取り扱われることがあります。
パートが社会保険に加入した際のメリットデメリット
健康保険料の負担が軽減される
厚生年金保険料と健康保険料は、労働者である自分と強者側であるパート先と折半になります。社会保険に加入することで、支払う保険料の半分をパート先が負担してくれるので、自己負担が減るというメリットがあるのです。 国民年金と国民健康保険の場合は全額自分で支払わなくてはいけません。自営業や個人事業主の方は国民年金と国民健康保険の加入となるため、自己負担が大きくなります。それらと比べると、社会保険に加入したほうが少ない自己負担で済む可能性があるのです。
遺族年金などの受給額が上がり保障が手厚くなる
パートが社会保険に加入するメリットは、遺族年金などの受給額が上がり保障が手厚くなるということです。他には、老齢年金や障害年金においてもメリットがあります。厚生年金は国民年金に比べて保障の幅が広くなるのです。
遺族年金のメリット
国民年金は、要件を満たす配偶者もしくは子どものみに支給。しかし遺族厚生年金は、要件を満たす配偶者、子ども、父母、孫、祖父母も受け取ることができ、支給対象が広くなります。子どものない配偶者は遺族基礎年金の受給はありませんが、厚生年金に加入して一定の要件を満たすことで、基礎年金の代わりに給付を受けることが可能です。
障害年金のメリット
国民年金の障害基礎年金の対象は、障害等級1、2級のみ。しかし障害厚生年金の対象は3級の場合に一時金が支給されるので、等級数が多くなります。
老齢年金のメリット
老齢厚生年金は、国民年金の老齢基礎年金に上乗せになって支給されるため、国民年金のみの方と比べると給付額が多くなります。
扶養の場合は健康保険料分が損となる
扶養に入っている場合は、本来であれば世帯において保険料の額を抑えることができます。しかし、パート先で社会保険に加入してしまうと、健康保険料分が損となる可能性があるので注意しましょう。健康保険料は親や配偶者の扶養家族として保障されるからです。 例えば親の扶養の場合、親の社会保険に加入している可能性が高いので、会社の社会保険に加入しないほうが保険料の負担が少なくなります。ただし親が自営業などでサラリーマンではない場合は例外です。また、配偶者の扶養となっている場合も、社会保険料は事実上免除となるため、やはりパート先の社会保険に加入すると、保険料分が損になります。
条件を確認した上で加入することが大切
社会保険(厚生年金・健康保険)に加入するには条件が必要です。労働時間や労働日数、雇用期間、賃金など、さまざまな条件を満たしていなければ加入することができません。 社会保険に加入することで健康保険料の自己負担の軽減や、遺族年金等の受給額が上がるなど、保障が手厚くなるというメリットがありますが、扶養に入っている場合は損をする可能性もあります。それらの条件をよく確認した上で加入することが大切です。
エクセライク保険株式会社 代表取締役。2018年MDRT会員取得。
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