老齢基礎年金を手堅く受け取るために、制度を正しく理解しましょう

老齢基礎年金とは私たちが老後に受け取る大切な年金のことです。しかも、受け取るにはきちんとした準備が必要になってきます。 どうしたら年金を受け取ることができるのか、少しでも多くの年金を受け取るにはどうしたらよいのか考えていきましょう。

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目次

2つの老齢年金とは

国民年金法による老齢基礎年金

20歳になった時点で誰もが国民年金に加入しなければいけません。この制度を、国民年金法といいます。将来の老齢基礎年金を受けるための重要なカギを握る制度になりますので、しっかりと理解をしておきましょう。 まず、国民年金に加入すると毎月保険料を60歳まで支払い続けます。加入をするといっても手続きの必要は特にありません。 支払う保険料は国民年金保険料といい、毎月一定の額を支払いますが、働く人の人数や平均寿命なども関係してくるため毎年見直されています。ちなみに、平成29年4月から平成30年3月までは16,490円となっています。 主に自営業や農業を営んでいる人、学生は自分自身で支払う為直接的に関わってくることになります。もし、支払いを怠ると未払い状態となり、将来老齢基礎年金を受け取ることができない可能性も出てくるので気をつけなければいけないでしょう。 そして、きちんと毎月支払うことで原則65歳になれば支払う側から受け取る側になります。この受け取る年金のことを老齢基礎年金といいます。

厚生年金保険法による老齢厚生年金

会社員や公務員の人は毎月厚生年金の保険料を支払っています。給料明細を確認すると目にすると思います。では、この厚生年金とはどのようなものなのでしょうか。 5人以上の従業員がいる会社では事業主が厚生年金保険法により厚生年金に加入する義務があり、そこに勤める人も厚生年金に加入することになります。国民年金は20歳から60歳まで加入義務がありますが、厚生年金の場合20未満でも加入することができ、70歳までという縛りになっています。 厚生年金の保険料を退職するまで支払うとにより老齢厚生年金を受け取る資格を得ることができます。(原則、加入して1ヶ月以上の保険料の支払いがあれば得られます) 厚生年金の保険料の額は給料の額により変わってきます。そしてこの保険料の中には、国民年金分の保険料も含まれているのです。厚生年金分と国民年金分、両方の保険料を支払うとなると負担が大きくなってしまいますが、実際は事業主が折半して保険料の半分を支払っています。 年金が支給される時には、国民年金分の老齢基礎年金と厚生年金分の老齢厚生年金の両方から年金を受け取ることができます。

老齢基礎年金の受給資格と3つの期間

老齢基礎年金の受給資格期間

老齢基礎年金を受け取るためには受給資格期間をクリアする必要があります。20歳から60歳の間に国民年金保険料を一定の期間支払うという決まりがあるのです。 平成29年3月までは国民年金の保険料を25年間支払わなければ受給資格得ることができませんでしたが、平成29年4月からは10年間の支払いで受給資格を得ることができるようになりました。かなり短縮されたので年金が受け取りやすくなったのは事実です。 また特例として学生のときに保険料を猶予してもらっていた期間や、何らかの事由で免除してもらっていた期間などもこの10年間に足すことができます。

保険料を納付した保険料納付済期間

その名の通り、国民年金の保険料を実際に支払った期間を保険料納付済期間ということになるのですが、ちょっとした疑問が生じてきます。わかりやすいように3種類の保険者に分けてどのようになるのか、説明していきましょう。 ☑ 第1被保険者 ☑ 第2被保険者 ☑ 第3被保険者 自営業、農業、フリーランス、学生などで国民年金の保険料を支払っている人を第1被保険者といいます。会社員、公務員で厚生年金の本人が保険料を支払っている人を第2被保険者といいます。両方とも自身で国民年金の保険料の支払いをしているので問題はありません。 第2被保険者の配偶者を、第3号被保険者といい、自身では国民年金の保険料を支払うことはありません。しかし第2被保険者の厚生年金の加入で第3号被保険者の国民年金の保険料は支払わなくても支払ったことになっている仕組みになっています。 基本的に20歳から60歳未満の人はこの3種類のどれかに分類されることになります。

保険料が免除された保険料免除期間

さまざまな理由により、国民年金の保険料を支払うことが困難な場合に保険料を免除してもらっていた期間を保険料免除期間といいます。この免除の期間はいくつかに分類されています。 ☑ 法定免除 ☑ 保険料全額免除 ☑ 保険料一部免除 障害年金を受け取っている人、生活保護を受けている人などが国民年金の保険料を免除してもらっている場合のことを法定免除といいます。前年度の所得が一定に満たない場合(個人ではなく世帯単位)は国民年金の保険料全額免除もしくは、保険料一部免除のどちらかになります。 免除を受ける際にはいずれにしても申請が必要となります。支払えないからと放置しておくと免除ではなく未納となってしまいます。未納というのは、支払いができるのにそれを怠っていると受け取られてしまいます。 免除の場合は老齢基礎年金を受け取ることができる保険料免除期間に反映されますが、未納になるとこの期間には反映されないので注意をしなければいけません。

年金受給権を発生させるための合算対象期間

年金の受給資格を得るために合算対象期間というものがあります。国民年金の保険料を10年以上支払っている人にはあまり関係のない話かもしれませんが、中にはあと数ヶ月で10年になるという人のためにある期間です。 年金受給の対象期間に必要なのは年金の保険料を支払った納付済み期間、保険料を免除してもらっていた免除期間そして、この合算対象期間なのです。では、合算対象期間について少し説明をしておきましょう。

昭和36年4月以降に20歳未満又は60歳以上の厚生年金の被保険者だった期間

国民年金の保険料を支払う時期は20歳から60歳までと決められていますが、20歳未満と60歳以上の人でお勤めをし、厚生年金の保険料を支払っていた人が当てはまります。

昭和36年4月から昭和61年3月の間で厚生年金の被保険者に扶養されていた人(今でいうと第3号被保険者に当たる人)

上記の対象者には国民年金の加入の義務はなかった為、任意加入とされていました。ですので、この期間に国民年金に任意で加入をしていなかった人。

昭和36年4月から平成3年3月まで間で学生だった20歳以上の人

上記の対象者にも国民年金の加入の義務はなく任意加入とされていた為、この期間に国民年金に任意で加入していなかった人。

昭和36年4月から昭和61年3月の間で 20歳以上60歳未満の人の国民年金任意加入者で未払いの人

上記の対象者に国民年金加入の義務はなかった為。

昭和36年4月以降の期間で、国民年金に任意加入しなかった20歳以上60歳未満の間の海外在住期間

日本人で、日本国内に住所がある第1号被保険者が海外に在住している場合、国民年金に加入する義務がなかったため任意で加入していた人以外。 上記で国民年金に加入の義務がなく任意で加入していたが、保険料を支払わなかった人も合算対象期間に当てはまります。 ※20歳未満で又は60歳以上の人で厚生年金を支払った人は国民年金分も支払っているにもかかわらず老齢基礎年金の納付済期間に反映はされません。ただし、老齢厚生年金分は支払った月数に応じて受け取ることができます。 合算対象期間に当てはまる事柄として主なものをまとめてみました。ただしこれらは、単に老齢基礎年金の受給資格を得る期間として重要視されているので、実際老齢基礎年金の受け取る額には関係がない為、にカラ期間ともいわれています。

老齢基礎年金支給額について

支給額の計算式

老齢基礎年金の支給額は国民年金保険料を支払っていた月数、免除の月数、未納月数などによって大きく変わってきます。そしてその計算の仕方は少し複雑かもしれません。 式としてまとめると、その年度の満額×〔保険料を支払った月数+(保険料全額免除の月数×4/8)+(保険料1/4を支払った月数×5/8)+(保険料半額支払った月数×6/8)+(保険料3/4を支払った月数×7/8)〕/480月 といった感じになります。

全額保険料を納付した場合の満額支給

国民年金の保険料を20歳から60歳まで免除や未納がなく40年間支払った場合の老齢基礎年金は満額という形で受け取ることができます。つまり支給額を計算する必要はありません。 満額の受取額は前の年の物価などにより変わってきます。ちなみに平成29年度の満額受取額は77万9,300円になります。

被扶養配偶者がいる場合の振替加算

会社員や公務員の人が20年以上厚生年金に加入して65歳になり年金を受給する立場になったとき、扶養しなければならない65歳未満の配偶者がいた場合に加給年金というものも年金に上乗せして受け取ることができます。 そして、この配偶者が65歳になると加給年金は無効となり、配偶者本人が老齢基礎年金に加え振替加算というものにかわり受け取ることができるようになります。 ただし配偶者が先に65歳になった場合(厚生年金の加入者より年齢が年上の配偶者)は注意をしなくてはいけません。厚生年金加入者が65歳になった時点で、老齢基礎年金額加算開始事由該当届を提出する必要があります。この届出をしないといつまでも振替加算を受け取ることができないので注意が必要です。

老齢基礎年金免除期間の減額率

全額免除の場合の減額

国民年保険料の全額を免除してもらっていた場合、老齢基礎年金は満額の半分が減額となります。 月々支払っている国民年金の保険料ですが正確にいうと全額支払っているわけではありません。実際には半分支払っていることになります。残りの半分はというと税金によって支払われています。 ですから全額免除の場合、自分の保険料の支払い分を減額され税金から支払われている分だけを受け取れるということになります。

3/4免除の場合の減額

3/4を免除してもらっていた場合は少し複雑です。まずは全体を1として考えてみることにしましょう。そしてこの1を2つに分けて1つは税金分の支払いとします。そして残りの1つを自分の支払う保険料分とします。 免除を3/4してもらっているので自分の支払い分の3つ分が免除してもらった分と考えると税金分の支払いと自分の支払い分に分けた2つをさらに4つずつ分ける必要があります。全体で8つに分かれそのうちの3つが免除分つまり減額される分になります。ということは、3/8が減額になるというわけです。

半額免除の場合の減額

同じように半額免除の場合の減額も考えることにしましょう。全体を1とし2つに分け1つを税金の支払い分、1つを自分の支払う保険料分とします。 2つを4つずつに分けて半額免除なので、自分の支払い分の2つ分を免除してもらった分とすると2/8が減額されることになります。

1/4免除の場合の減額

1/4免除の場合も同じ考え方ですがおさらいをしてみましょう。全体を1として税金の支払い分と自分の支払う保険料分の2つに分けます。 2つを4つずつに分けて自分の支払い分の1つ分が免除してもらった分なので、1/8が減額されることになります。

老齢基礎年金の支給時期

原則は65歳からの受給

老齢基礎年金を受け取ることができるのは原則65歳からですが、65歳になる前の日から受給の権利が与えられ老齢基礎年金の請求ができるようになります。 ただ、残念ながら請求してすぐに受け取りということにはなりません。受給の権利が得られた次の月から受け取ることができるようになるのです。 さらに年金が支給されるのは毎月ではなく2ヶ月に1度となっていて、しかも偶数月の15日と決められているので受給権を得たタイミングによっては年金を受け取るのは、少し先の話になってしまうかもしれません。

支給の繰り上げと繰り下げ

老齢基礎年金の受け取りに関しては原則65歳からとなっていますが、例外として繰り上げや繰り下げをすることも可能です。 繰り上げ支給とは65歳になる前に年金を受け取るということになります。1ヶ月単位で前倒しが可能になりますが60歳になってからが条件です。 早く年金が受け取ることができるとメリットのように感じてしまいがちですが、1ヶ月前倒しするごとに受け取れる金額が減っていってしまいます。 仮に60歳から繰り上げをしてしまうと3割も減額されることになり、この減額は65歳を過ぎてからも続くことになり、年金の受給額が通常よりも減ってしまうことになります。 注意点としては、手続きをしなければ支給の繰り上げはできません。1度手続きをすると取り消すことができません。手続きをする前によく考えることが大切です。 逆に繰り下げ支給とは65歳になっても年金を受け取らず遅らせて受け取ることになります。こちらも1ヶ月単位で遅らせることが可能で、最大70歳まで引き延ばすことができます。 繰り下げ支給の場合、遅らせた月数によって年金を受け取る額が増額されていきます。遅らせた分だけ増額されるのです。仮に70歳まで遅らせると42パーセントの増額になり、65歳を過ぎてもずっと続きます。 65歳を過ぎても現役で働いてる人にはよいかもしれません。自分の好きなタイミングで請求の手続きをすることができます。

老齢基礎年金を増やすには

付加保険料を納めて付加年金を受給

将来受け取る老齢基礎年金の受取り額を増やしたいと思う人は付加年金を活用しましょう。毎月支払う国民年金の保険料に400円ずつ上乗せをして支払います。これを付加保険料といい、そうすることで年金を増やすことができます。上乗せをした月数が多いほど受け取る年金も多くなるという訳です。 例えば5年(60ヶ月)付加年金の保険料を支払います。付加年金の受け取りは1ヶ月200円になるので、60ヶ月×200円=12,000円になり65歳から老齢基礎年金を受け取っている間は常にプラスで1万2,000円を受け取ることができます。毎月400円を支払って200円しかもらえない?と思うかもしれませんが計算すると、支払った金額は60ヶ月で2万4,000円です。受け取る額は65歳から毎年2,000円ですから2年で元が取れてしまうお得な年金なのです。

国民年金基金に加入する

もう1つ老齢基礎年金の受取り額を増やす為に、国民年金基金に加入するという手段があります。加入条件は20歳から60歳までの国民年金の保険料を支払っている自営、農業、学生などが対象となります。 会社員や公務員の人が加入している厚生年金の代わりなるようなイメージです。厚生年金を支払っている人は老齢基礎年金も受け取ることができますが、国民年金だけ支払っている人はその分しか受け取ることができないのです。 これらを踏まえ、自営、農業、学生などの人にも老齢基礎年金の受け取りを増やすために国民年金基金の存在があります。 この年金は公的な年金になり、2種類に分類されています。業種ごとにまとめて1ヵ所で指揮をとる職能型基金と都道府県ごとで指揮をとる地域型基金です。 どちらか一方の選択しかできませんが、内容は同じものとなっているのでどちらにしようかそれほど考える必要はなく、単純に将来的に移動などの心配がなければ地域型基金、どこかに移住というような計画があるなら職能型基金などの決め方で十分です。 月に支払う金額は加入時の年齢や性別などにより異なってきます。また一口単位になっているので何口入るかによって、それぞれのライフプランによって決めるのがよいでしょう。支払いの途中のでも口数の変更などは可能です。

老齢基礎年金の仕組みを理解し将来に備えよう

私たちの老後に欠かすことのできない年金の世界、知れば知るほど奥が深く実際にその準備期間が非常に大切になる老齢基礎年金の仕組みが少しはおわかり頂けたのではないでしょうか。 しかも20歳になった時点で老齢基礎年金に関わる出来事が動き始めるのです。これは放っておく訳にはいきません。遠からずやってくる将来の自分の生活に直接関わってくることです。 備えあれば憂いなしです。お金のストレスを抱えず、好きなことをして、さらに安定した幸せな生活を送ることができるように、老齢基礎年金についての仕組みをしっかりと理解し、今から計画を立て準備をしましょう。