国民年金の加入の仕方は大きく分けて3種類あります。その中でも、第3号被保険者であることにはいろいろなメリットがありますし、第3号被保険者になるためには条件があるということも知っておかなければいけません。将来の年金がどうなるか確認しましょう。
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第3号被保険者のメリット
国民年金保険料が実質無料
国民年金の加入の仕方は大きく分けて以下の3種類です。 ☑ 1.第1号被保険者(自営業や学生など) ☑ 2.第2号被保険者(会社や役所に勤務する厚生年金加入者) ☑ 3.第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される配偶者) 第3号被保険者はサラリーマンや公務員の妻(夫)で、他の2種類とは違い、国民年金保険料は実質無料でありながら、国民年金に加入しているのと同じ扱いになります。第1号被保険者の場合は、毎月1万6,000円くらい保険料がかかり、第2号被保険者の場合は、厚生年金保険料を負担している中に国民年金分も含まれているので無料ではありません。 一方で、第3号被保険者の場合は、健康保険の被扶養者とセットになるので、健康保険料や年金の本人負担はゼロです。夫(配偶者)の負担が増えることもありません。そのため、保険料を払わないのに年金がもらえるお得な制度だともいわれています。
第1号被保険者と同額の老齢年金を受け取ることができる
もし20歳までに会社員や公務員と結婚し、20歳〜60歳まで第3号被保険者として国民年金に加入したのであれば、40年間保険料の負担がないのに、第1号被保険者と同じ額の老齢基礎年金を65歳から満額受け取ることができます。第3号被保険者の期間は、国民年金保険料を完全に支払ったという扱いになるため、その期間は100%支払った者として計算されるのです。 保険料を支払わない「免除」に関しては、免除された金額に応じて年金の額が減ってしまうため、そのケースと比較しても第3号被保険者はお得だといえます。また、障害年金や遺族年金をもらおうと思った際には、保険料をある程度納めたという納付要件が必要になるため、そのチェックに関しても納付した扱いとされるので、第3号被保険者であるというメリットは大きいです。
働きながらでも第3号被保険者になれる
第3号被保険者になれるのは、専業主婦(主夫)だけではありません。働きながらでも第3号被保険者になれます。ただし、年収106万円以上になったら適用外になるなどの要件があります。これは、よく「106万円の壁」といわれているものです。 働きながら第3号被保険者になるためには、既定の要件を満たしていなければいけません。パートやアルバイトなどの短時間労働者であっても、以下の要件に当てはまる方は社会保険(健康保険、厚生年金保険)に加入する必要があるからです。その場合は第2号被保険者となります。
社会保険に加入する必要がある(第2号被保険者になる)短時間労働者の要件
☑ 1.1週間の所定労働時間が20時間以上 ☑ 2.給与の月額が8万8,000円以上(年収106万円以上) ☑ 3.勤務時間が1年以上の見込みがある ☑ 4.学生ではない ☑ 5.社会保険の対象となっている従業員数501名以上の事業所に勤務している 上記の要件をすべて満たしている場合は、社会保険に加入する必要があるので、働きながら第3号被保険者になることはできません。
離婚した場合の年金分割も得
万が一離婚をした場合でも、厚生年金を持ち寄って分け合うことができる「離婚分割」という制度があります。この離婚分割制度は、年金事務所で請求の手続きをしないと分割された年金を受け取れません。請求期限は原則として、離婚成立の日から2年以内です。 「離婚分割制度」には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2種類あります。分割された年金を受け取るためには、どちらの制度を利用する場合でも離婚成立の日から2年以内に手続きを済ませましょう。「合意分割制度」も「3号分割制度」も離婚によって年金が分割されるという制度ですが、仕組みが少し異なります。
合意分割制度
合意分割制度は、夫婦どちらかの請求により、婚姻期間中の厚生年金・共済年金の保険料納付記録を分割するという制度。年金を分割するか、分割割合をどうするかは、夫婦間で合意もしくは裁判所で決定します。分割の割合は最大で1/2です。
3号分割制度
3号分割制度は、夫の同意がなく第3号被保険者の妻からの請求だけでも、夫の厚生年金・共済年金の保険料納付記録を自動的に1/2に分割できるという制度。つまり、離婚分割を申請すれば、第3号被保険者だった期間に相当する配偶者の年金記録を、配偶者の同意なしでも無条件で50%分けてもらうことができるのです。ただし、対象となる期間は平成20年4月以降の婚姻期間中のみなどの制限があります。
3号分割で注意するポイント
☑ 1.年金を分割するのではなく、厚生年金の保険料納付記録を分割する(ただし、フリーランスや自営業のような第1号被保険者の加入記録は、離婚分割の対象外) ☑ 2.対象期間は平成20年4月以降の結婚時〜離婚時まで、結婚前の期間は離婚分割の対象外 ☑ 3.離婚分割を受ける人は被保険者の種別を問わない。(第1号〜第3号被保険者のいずれの種別でもOKで、すでに年金を受け取っている人も対象となる)
第3号被保険者になるために知っておきたいこと
第3号被保険者となる条件
第3号被保険者となるためには年齢や年収に条件があります。年齢は、本人が20歳〜60歳になるまで。そこまでで積み立て不足があった場合は、任意加入ができます。扶養に入っている間でも、自分で保険料を支払わなくてはいけません。また、本人が60歳になっていなくても、配偶者が65歳になったら原則として第3号被保険者ではなくなり、第1号被保険者に移行することになります。そのため、年齢差のある夫婦は注意が必要です。 年収の条件は、同居の場合、年間年収が130万円未満かつ被保険者(配偶者)の収入の半分未満。障がい者や60歳以上の場合は、180万円未満です。別居の場合、年収が130万円未満(または180万円未満)かつ被保険者(配偶者)の仕送りの額より少ないということが条件。生活を仕送りに頼っているのであれば扶養されているといえます。
年間収入について
年間収入とは、過去の収入で判断するのではなく、被扶養者となった日以降の年間の見込み収入額のことです。(給与所得等の収入があれば、月額10万8,333円以下。雇用保険等の受給者であれば、日額3,611円以下。) また、被扶養者の収入の中には、雇用保険の失業等の給付、公的年金、健康保険の傷病手当、出産手当金も含まれます。働いている場合は給与だけで判断しないように注意しましょう。
具体的な対象者年齢と年収の例
第3号被保険者の対象者年齢は、本人が20歳〜60歳になるまでで、配偶者が65歳になったら第3号被保険者期間は終了です。年収が130万円未満(障がい者や60歳以上の場合は180万円未満)という条件は、今後1年間に得られるであろう収入がその金額になる見込みかどうかで判断されます。 例えば、年収が150万円になる仕事を始めた場合、130万円以上の収入を実際に手にするまで扶養に入っているのではありません。年収が150万円になるという見込みが立つのは仕事を始めた時点なので、その仕事を始めたときに扶養を抜けることになるのです。
年収が130万円未満でも扶養に入れないケースとは
収入の中には、障害年金や雇用保険の給付などの非課税の収入も含まれます。そのため、雇用保険をもらうなら、日額3,611円(130万円÷360日)未満であることが扶養に入る条件。もしトータルの雇用保険受給額が130万円未満であっても、日額が3,611円以上の場合、扶養には入れません。 また、妻自身が厚生年金に加入する場合は、厚生年金が優先になるので、年収が130万円未満でも扶養に入ることはできなくなります。このように、年収130万円未満でも扶養に入れないケースがあるので注意しましょう。
届け出の際に必要なもの
配偶者の不要となり第3号被保険者になる際には、本人が年金事務所に届け出をするのではなく、配偶者の会社を通して年金事務所に「被扶養者届(異動届)」ならびに「国民年金第3号被保険者資格取得届(種別変更届、該当届)」を提出します。 所得税法の規定による控除対象配偶者または扶養親族になっていれば、基本的には配偶者の会社(事業主)の証明があれば添付書類は不要です。しかし、場合によっては収入要件確認のための書類が必要になるケースもあります。詳細については日本年金機構のホームページで確認することが可能です。 詳細はこちら
届け出先
届け出先は、被保険者(配偶者)の会社です。健康保険組合もしくは共済組合が会社(事業主)に代わって被扶養者の確認を行うケースが多いです。詳しい手続きの手順は以下のようになります。 ☑ 1.被保険者が会社に届け出をする。 ☑ 2.会社(事業主)から健康保険組合もしくは共済組合に提出。 ☑ 3.組合が扶養認定された配偶者であることの確認をし、医療保険者欄に証明を行う。 ☑ 4.証明されたら、組合が会社(事業主)に提出。 ☑ 5.会社(事業主)が窓口となり、管轄の年金事務所に提出。 ☑ 6.後日、年金事務所から届出者住所に第3号被保険者該当(もしくは非該当)通知書が送付される。
第3号被保険者資格取得届の記入例
被扶養配偶者に認定されたら、第3号被保険者資格取得届、種別変更届、種別確認(3号該当)届を提出します。第3号被保険者資格取得届の記入例は、日本年金機構のホームページ等で確認することができます。 配偶者と被保険者の両方の氏名や生年月日などの個人情報を記入する欄があります。また、事業主が記入・署名・押印をする欄、健康保険組合もしくは共済組合が記入・署名・押印をする欄、第3号被保険者本人が記入・署名・押印(第3号被保険者本人が自署した場合は、押印はいらない。)
第3号被保険者の注意点
多額の年金は受け取れない
第3号被保険者である期間は、国民年金をすべて納めたという扱いになります。しかし、40年間すべて第3号被保険者期間だったとしても、もらえる年金は基礎年金満額ではあるものの、年額77万9,300円(平成29年度の場合)です。 多額の年金を受け取ることはできませんが、保険料を払わずに年金をもらえるという意味ではコストパフォーマンスは良いといえます。第3号被保険者期間は保険料を払わなくてもいいというメリットは大きいのですが、受取額に限界があるということも知っておいたほうがいいでしょう。
一時的な月収増加でも資格を失う可能性有
妻が年収130万円未満で働いている場合でも第3号被保険者として認められて保険料納付の免除などの恩恵を受けることができますが、企業の健康保険組合や公務員の共済組合にはそれぞれ独自の規約があるので注意が必要です。 例えば、月収10万8,333円(年収130万円を12ヶ月で割った額)以上が3ヶ月以上続いた場合は扶養から外れるという規約になっていることがあります。その場合、残業などで一時的な月収増が3ヶ月続いたら、年収では130万円を下回っていたとしても、第3号被保険者の資格を失ってしまうのです。加入している組合の規約をよく確認しましょう。
資格を喪失した場合
条件から逸脱したら届け出がいる
第3号被保険者となる条件から逸脱し資格を喪失した場合は、届け出が必要です。例えば、配偶者が退職したとき、配偶者が自営業になったとき、配偶者が65歳になったとき、配偶者が亡くなったとき、離婚したとき、第3号被保険者の収入が基準額以上に増加したときなど。これらの場合は配偶者の扶養から外れて第1号被保険者に移行します。 第1号被保険者になった場合は、自分で保険料を納付しなくてはいけません。ただし、必要な届け出をしなかったために第3号被保険者になったままになっていることが後で判明するというケースが問題視されています。「第3号被保険者の不整合記録問題」といわれていますが、本来届け出をしなければいけない期限から2年以上経過すると、保険料の納付の受付ができなくなるのです。未納期間が生じてしまい、将来受け取れる年金額が少なくなったり、受給資格期間が満たされずに年金が受給できなくなる恐れがあるので注意しましょう。
届け出の方法
1.被扶養配偶者非該当届に記入
第3号から第1号に変更になる場合、配偶者の会社に「被扶養配偶者非該当届」を提出します。そのため、被扶養配偶者非該当届を記入しましょう。 配偶者の会社(事業主)は、提出された届について、該当者の基礎年金番号や届け出内容の確認をしてから日本年金機構(各年金事務所)に提出します。そして、提出された被扶養配偶者非該当届の情報に基づき、手続きを推奨。そてでも手続きがない場合、日本年金機構が届け出によらない第1号被保険者への種別変更処理を行い、不整合記録になることを防止します。
2.役所等にご自身で提出
国民健康保険と国民年金のいずれも、市町村役場等で受け付けているので、自身で提出します。窓口は異なるので注意しましょう。住んでいる地域によっては、最寄りの出張所などでも受け付けています。 必要な書類は、資格喪失証明書、年金手帳、印鑑、免許所などの本人確認書類です。国民健康保険や国民年金は、自分で手続きをしない限りそのままになるので、不整合記録にならないように必ず手続きをするようにしましょう。
第3号被保険者は魅力的な制度なのでしっかり確認して利用しよう
第3号被保険者は、国民保険料が実質無料でありながら、第1号被保険者と同額の年金を受け取ることができます。第3号被保険者になるためには条件がありますが、条件を満たし第3号被保険者でいることにはメリットがあるといえるでしょう。 第3号被保険者は、魅力的な制度です。将来の年金がどうなるのかを知るためにも、今のうちにしっかり確認して、第3号被保険者の制度を利用しましょう。
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