個人年金の見過ごされがちなデメリット。いくつ知っていますか?

公的年金に対する不安から、個人年金を検討する人が増えています。 個人年金保険は税金控除などのメリットばかり注目されがちですが、デメリットもあることを念頭において加入しないと、あとで後悔することになるかもしれません。

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知っておくべき個人年金のデメリット

途中解約は元本割れをする可能性がある

老後のための資産形成の手段として個人年金保険を選んだ場合、基本的には途中解約をしないほうが得策です。 日々の生活のなかでどうしてもまとまったお金が必要になったり、積立自体が負担に感じたりして解約を考えることもあるかもしれませんが、ここで少し落ち着いて途中解約のデメリットを考えてみましょう。 解約をすると解約返戻金が支給されますが、基本的にはそれまでに払い込んだ保険料の総額を上回ることはありません。つまり、元本割れの状態です。 個人年金は年金受取開始年齢が近づくにつれて返戻率が高くなりますが、すべての払込期間を経て年金として受け取るよりは利率が悪くなるため、途中で解約することはおすすめできません。 また、加入後3年目までに解約した場合は返戻率が低いので気をつけましょう。どうしても個人年金への加入を考えるのであれば、途中で解約する事態にならないように無理のない支払いプランを立てることが不可欠です。

定額型はインフレに影響されやすい

支払う保険料や、将来受け取る年金額が決まっている定額型の個人年金保険はライフプランも立てやすく、その安定性から人気の高いタイプの保険です。 変額型と違い、景気によって年金が減ることもありません。しかし、インフレになるとリスクがあるという部分は見過ごされがちです。 定額型は契約時に運用利回りが決定されるため、払込期間中はずっと固定金利ということになります。 つまり、年金受け取り時に物価が上昇していた場合、個人年金の受け取り額はすでに決まっているため、年金価値が減って損をする可能性があるのです。 現在の低金利下においての金利水準で数十年もの期間を固定運用するということは、実質資産が目減りする可能性が高くなる運用方法だということです。 今のお金の価値と、将来年金を受け取る頃のお金の価値が変わるリスクがあることを覚えておいてください。

加入した生命保険会社が破綻した場合に損をする

もしご自身が加入した生命保険会社が破綻してしまった場合、将来受け取れるはずだった年金が減らされるデメリットがあります。 実際に生命保険会社が破綻する可能性は低いため、必要以上に心配することはありませんが、もしもの場合において影響があることは免れません。 一般的には、銀行が破綻した場合の預金は1人あたり1千万円までの元本が預金保護機構により保障されることになっていますが、生命保険会社の場合は少し違います。 万が一生命保険会社が破綻すると、すべての保険会社が加入している「生命保険契約者保護機構」という組織によって一定額が保障されます。 保険契約は維持されるものの、保険金削減の措置を取られる可能性があり、その際は元本割れにつながります。 受け取り額が全くなくなるわけではないためひとまず安心ですが、受け取るはずだった年金額よりも少なくなるのは免れないようです。

利率が低いため大きなリターンがない

個人年金保険は変額型と比べて手堅く、リスクも低いのが魅力な反面、その分利率が低いのが難点です。 資産形成の手段のひとつとしては安全性が高く、元本割れリスクも他に比べて少ない個人年金保険ですが、お金が大きく増えるわけではないため大きなリターンは見込めません。 低リスク投資のなかには個人年金よりも利回りが高いものも存在するため、大きくお金を増やす目的の場合は別の投資方法を選ぶことも視野に入れましょう。

終身年金の場合は早死にすると損

日本人の平均寿命は男性は80.98歳、女性は87.14歳と、年々延びており、世界一の長寿大国の名を不動のものとしています。 私たちが長生きをする可能性を考えると、保障が一生涯続く終身年金は安心できる選択です。 しかし年金受け取り開始から数年で被保険者が死亡してしまった場合は、その時点で年金がストップするため、支払った保険料が無駄になるリスクがあります。 そのような元本割れの可能性を避けるため、保証期間付有期年金や保証期間付終身年金などとよばれるものを選び、5年や10年などの保証をつけるのがおすすめです。 ただし、このような保証をつけることによって保険料がさらに高額になってしまうというデメリットもあるため、長期的に払込みが可能かどうかプランを練る必要があります。

デメリットが気になる人におすすめの個人年金の貯蓄法

インフレの影響リスクが少ない分散貯蓄

個人年金保険のインフレリスクによるデメリットをあげましたが、インフレの影響がどうしても気になるという人には、個人年金とほかの貯蓄商品を組み合わせた分散投資がベストです。 仮に資金の100%を個人年金保険に投入した場合、老後の資金形成として積立をしていく途中でインフレが起こると仮定すると、すべての積立金がインフレの影響を受けて目減りする恐れがあります。 しかし、積立資金の1/2を個人年金保険に、もう1/2をインフレに対応可能な変動金利などの商品に分散することで、インフレ時に資産の半分は影響を受けたとしても、残り1/2は影響リスクを軽減することができるのです。 インフレに強い商品としては、物価上昇と連動する株式や外貨建て投資などが挙げられ、これらがリスクを分散してくれる鍵となります。 個人年金保険で貯蓄をする場合はインフレリスクを視野に入れ、リスクに強い貯蓄商品と組み合わせることでインフレの影響を回避しましょう。

インフレ対応力がある個人向け国債

インフレ対策として特におすすめなのが、国が発行する個人向け国債です。国債はほかの投資商品と比べて比較的安全性が高く、投資初心者にもおすすめです。 個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類の商品があり、それぞれ満期と金利が異なります。 なかでも「変動10年」は市場の金利の動きに合わせて半年ごとに適用される金利が変わるため、個人年金保険よりもインフレへの対応力があります。 インフレリスクを軽減するための分散貯金の対象としては、非常にぴったりの商品といえるでしょう。 さらに個人向け国債には最低金利が保証されており、0.05%以下になることはありません。 現状のマイナス金利下では定期預金に資金を預けてもほとんど利子が付かないため、国債は定期預金よりも利率がいいというメリットがあります。 また、「変動10年」のほかにも「固定5年」と「固定3年」という商品がありますが、こちらは固定金利のため、インフレ対策にはならず資産の価値を減らしてしまうことになりかねません。 市場の金利の動きによって利率が変動するという点では、「変動10年」がインフレにもっとも対応力があるといえます。

預入期間が短期の定期預金

現時点では日本において低金利が続いているため、固定金利の定期預金に資産を預けても価値が目減りしかねないといわれています。 しかし、そんな定期預金も上手に活用することでメリットを享受することができるのをご存知でしょうか。 例えば、定期預金の預け入れ期間を1年や2年などの短期間にしておくことで、満期がきて預け直しをするたびにそのときの金利が適用されるため、長い目でみると変動金利の商品のような使い方ができるのです。 使い方次第では、とても魅力的な貯蓄方法へ様変わりするのが定期預金です。 定期預金は個人年金保険に比べて元々の金利は低いですが、世の中がインフレに転じたときに金利の上昇が見込めます。 個人向け国債同様、定期預金を分散貯金として使い、インフレリスクを軽減しましょう。

個人年金のメリット

税金を控除できる

ここまで個人年金のデメリットについて触れてきましたが、次はメリットの部分にも焦点を当ててみましょう。 まずはじめに、個人年金保険の保険料は保険料控除の対象となりますので、一年間に支払った保険料の金額に応じて所得税や住民税から一定額が所得控除され、大変お得です。 会社員の人は年末調整で一定の金額が還付されますので、それほど手間はかかりません。自営業者の人は確定申告の際に、生命保険料控除証明書を添えて申告書とともに提出する必要があります。 いずれも保険料の払込を続ける期間中は毎年還付されますので、長期的視野でみると個人年金保険料控除による節税効果は絶大です。 また、個人年金保険控除は生命保険や医療保険、がん保険などとは別枠で控除できるのも見逃せない点。 すでに生命保険料控除の枠が満額に達している人でも、それとは別に個人年金保険料控除として、所得税で最高40,000円、住民税だと最高28,000円まで控除枠が使えるため、大きな節税に一役買ってくれます。 ほぼノーリスクで税負担を軽くすることができる個人年金はかなりお得ですので、保険料控除をじょうずに活用し、節税のメリットを最大限に受けつつ資金を増やしていきましょう。

貯蓄が苦手な人は安定した貯蓄ができる

貯蓄がどうしても苦手で、老後の資産形成どころではないという人も多いのではないかと思います。そのような人たちには共通して、手元に使えるお金があるとすぐに手をつけてしまう傾向がみられます。 ただ銀行に預金しているだけではいつでもおろして使うことができるため、貯蓄がなかなか増えません。 その一方で個人年金は、現金を使いたいがために途中で解約すると元本割れする恐れがありますので、心理的に貯めたお金を引き出しにくいというメリットがあります。 保険料の支払い方法は銀行引き落としやクレジットカード払いとなっており、預金から自動的に引き落とされるため、確実に資産を貯めることができます。 積立預金や財形貯蓄という貯蓄方法ではついつい引き出してお金を使ってしまう人でも、無理なく資産形成の道を歩むことができるのです。

受け取る総額が保険料よりも1割~2割増しになる

個人年金保険を途中で解約せずに貯蓄した場合、最終的に受け取る年金の総額は支払った保険料の総額を上回ることがほとんどです。 平成27年度の生命保険に関する全国実態調査では、1年間に支払う個人年金保険料の世帯合計額は平均17万9,000円となっています。 これはあくまでも平均であって、年間の払込額が60万円以上の世帯もあれば60,000円未満の世帯もあり、かなりの差があります。 また、年金受け取り開始時の1年間に受け取れる年額は、平均で101万円となっています。そして保険料の払込期間が長ければ長いほど、返戻率は高くなります。 つまり、個人年金へ加入するタイミングが早いほど、年金の受け取り額が高くなるチャンスがあるということです。 多く支払った保険料の総額の1割~2割増しで戻ってくるため、利息がほとんど見込めない銀行の普通預金よりも、個人年金で老後の資金形成をするほうが有効だといえます。

個人年金はデメリットを理解したうえで加入する

個人年金についてはメリットの部分を大きく取りあげられがちですが、インフレリスクや途中解約による元本割れなどのデメリットがあることについても、しっかりと把握しておくことが大切です。 それでもメリットの部分が大きいと感じる人、個人年金を途中解約する可能性の低い人、株などの高リスク投資は避けたい人などは、個人年金による貯蓄で老後の資産形成をすることもひとつの手段です。 個人年金を活用する際は、しっかりとリスクを軽減するために他の金融商品と組み合わせて貯蓄する分散投資を心がけ、デメリットを解消しながら賢く貯蓄に励みましょう。