国民年金のひとつである寡婦年金。遺族年金との違いや、寡婦年金制度そのものを知っている人は、意外に少ないようです。万が一の際に、慌てたり戸惑ったりすることのないようにしておきたいものですね。まずは寡婦年金についての基礎知識を理解しましょう。
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寡婦年金の特徴
夫が払った老齢基礎年金を妻が受け取るシステム
寡婦年金の「寡婦」とは、夫を亡くした妻のことをいいます。寡婦年金とは、免除期間なども合わせて25年以上国民年金に加入している夫が、年金をもらわずに死亡した場合に妻に給付される年金のことです。 一種の遺族年金となるもので、死亡した夫が老齢年金を受けるために支払った保険料が、掛け捨てにならないようにする措置として設けられています。 寡婦年金は、遺族となった妻に対して支給される年金ですが、受給には期間が設けられている有期年金です。ちなみに、厚生年金に加入している夫が死亡した場合、妻は厚生年金の寡婦年金を受給することはできません。その代わりになるのは「中高齢寡婦加算」という制度を受けることができます。 中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金の受給要件に該当する40歳〜65歳までの妻で、18歳未満の子供がいないことが要件となります。 60歳になると、中高齢寡婦加算は終了するため、国民年金部分を寡婦年金か遺族厚生年金かのいずれかを選択して受給することに。通常は、遺族基礎年金のほうが金額が高いこともあり、多くの人は、遺族年金を選択することが多いようです。 また、これらの他にも「死亡一時金」という保険料の納付期間によって受給できる制度があります。死亡一時金は、数年間にわたってもらえる年金とは異なり、お見舞金のような形で一回のみの支給であり、もらえる金額も少ないことから、寡婦年金を受給する人も多いようです。
老齢基礎年金が受給できるまでのつなぎ
遺族年金には、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。これに加えて「寡婦年金」という国民年金から支給される「掛け捨て防止」のためのシステムがあります。 社会保険が給与から差し引かれている会社員と異なり、自営業の妻の場合は遺族厚生年金も中高齢寡婦加算もない場合があります。 60歳で夫を亡くした妻への救済制度でもある寡婦年金は、その代わりとして老齢年金が受給できるようになるまでのつなぎになる年金システムです。
非課税である
寡婦年金は、受給金額にかかわらず、全額申告不要、課税の対象外となります。また、65歳になった時点で、寡婦年金の支給は終了となります。 寡婦年金以外の「遺族基礎年金」、「死亡一時金」、「遺族厚生年金」も全額非課税となり、所得税や相続税の対象とはなりません。
寡婦年金の受給要件
結婚期間が10年以上
寡婦年金を受給するための要件としてのひとつめは、「結婚期間が10年以上で、妻が65歳未満であること」。日本年金機構のホームページには、次のような記載があります。 第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給されます。 日本年金機構ホームページ 詳細はこちら ちなみに、結婚していない場合でも事実婚であることが認められれば、受給を受けることは可能です。また、「死亡した当時、夫によって生計を維持されていた妻であること」も必要で、別の誰かと再婚すると、寡婦年金を受け取ることはできません。
夫が死亡して妻が生存している
寡婦年金は、国民年金に加入していた夫と生計をともにしていた妻が受け取ることができる年金です。妻が死亡した逆の場合は、夫は寡婦年金を受け取れないので、注意しておきましょう。 ちなみに、寡婦に対して寡夫という言葉もありますが、寡夫年金というものは存在しません。遺族年金は、夫でも妻でもどちらの立場でも受給することが可能となっています。
夫が国民年金保険料を25年以上納付していた
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者の保険料納付済み期間が25年以上であることが受給要件となります。年金期間には、免除期間も納付期間に加味される、厚生年金の場合は遺族厚生年金の寡婦加算となることもおさえておきましょう。 ちなみに、老齢年金の受給に関しては、平成29年8月から制度が変更となっています。これまで25年以上の納付が義務付けられていましたが、免除期間を合算して10年以上の納付期間があれば、老齢年金を受給することができるようです。 厚生労働省ホームページ 詳細はこちら
夫が老齢年金や障害年金を受給していない
寡婦年金を受給するためには、死亡した夫が老齢年金や障害年金を受給していないことも挙げられます。寡婦年金は、こうした年金を受給していると受け取れないので、注意しておきましょう。年金は、1人1年金の原則が適用されます。 それぞれの年金の特徴は、以下の通りです。 ☑遺族基礎年金:遺族年金は、死亡した被保険者のうち、死亡した被保険者によって養育されていた子供がいることが支給要件です。18歳未満の子供を養育することが目的の年金なので、子供が親と暮らしていない場合は、子供に遺族年金が支給されます。 ☑死亡一時金:一定の要件を満たした人が死亡した場合、遺族に支払われる一時金で、年金ではありません。保険料を納付した期間に応じて一時金の額が異なります。 ☑老齢年金:老齢基礎年金と老齢厚生年金は、受給要件を満たせば、60歳からの繰上げ支給を受けることができます。その場合に寡婦年金との併給はできません。
妻に遺族基礎年金の受給資格がない
寡婦年金と遺族基礎年金は、同時に受給することはできません。しかし、遺族基礎年金を受給していた人だとしても寡婦年金を受給することは可能です。 たとえば、夫が亡くなり遺族基礎年金をもらっていた妻が60歳未満で、子供が18歳に達したため、遺族基礎年金の支給が停止されたとします。 この場合は、再婚せずに寡婦年金を受給できる要件を満たしていれば、60歳から65歳までの5年間、寡婦年金を受給することが可能です。また、自営業を営んでいる家庭の場合は、国民年金から遺族基礎年金を受給することになります。 しかし、この遺族年金は、18歳未満の子供を養育する目的で支給されるものであるため、子供がいない家庭や成人した子供の家庭では、遺族基礎年金をもらえないことになってしまいます。せっかく滞りなく夫婦ともに国民年金保険料を毎月納めていても、これでは元も子もありません。 こうした理不尽さを防ぐためにも寡婦年金は、掛け捨て防止の目的として遺族基礎年金をもらう資格のない妻に対して支払われる年金制度となっています。
寡婦年金の金額と受給期間
夫が受け取る予定の金額の75%
寡夫年金は、死亡した夫が受け取る予定であった老齢年金金額の75%を5年間受給することができます。たとえば、老齢基礎年金額が78万円だった場合、78万円の75%を5年間にわたって受給することになるので、総額は約290万円となります。 死亡一時金は、国民年金の納付期間によって、金額が異なります。そのため、死亡一時金と寡婦年金のどちらが多いかは、そのときになってみないとわかりません。 また、寡婦年金の受給を受ける要件は、死亡一時金に比べて厳しいこともあり、寡婦年金を選びたくてもできない場合があることも理解しておきましょう。
65歳未満である
寡婦年金は、60〜65歳までの5年間受給される有期年金です。夫が死亡した当時の妻の年齢は、65歳未満であることが要件となります。 もし、老齢基礎年金の繰り上げ受給を申請してた場合、60歳から年金を受け取ることになっているため、老齢基礎年金と寡婦年金の両方を受けることができませんので、注意しましょう。 また、妻自身が会社員として勤めていたことがあり、厚生年金に加入していたことがある場合は、60歳から老齢厚生年金を受け取ることができます。その場合、寡婦年金と自分の老齢厚生年金とをそれぞれ計算し、お得なほうを選択するのがよいでしょう。
受給時の注意点
遺族基礎年金と死亡一時金は受け取れない
遺族年金と寡婦年金は、併用して受給することはできません。いずれか一つしか受け取れないので、選択する必要があります。遺族基礎年金の受給総額は、必ず寡婦控除の総額を上回るため、必ずしも寡婦年金を受ける必要はありません。 遺族基礎年金、死亡一時金、寡婦年金は、併給不可であることをきちんと理解しておきましょう。それぞれの受給対象となる遺族は以下の通りです。 ☑寡婦年金:子供のいない妻、または結婚期間が10年以上、かつ65歳未満の妻 ☑遺族基礎年金:子供(18歳未満)の子供がいる妻、またはその子供 ☑死亡一時金:上記のいずれにもあてはまらない妻
老齢基礎年金を繰り上げ支給されていると受け取れない
通常、老齢年金は65歳から支給される仕組みとなっています。上記にも述べていますが、これまで25年以上の納付が必要だった老齢基礎年金は、免除期間を含めて10年以上の納付期間があれば、受け取ることができるようになりました。 この老齢年金は、希望すれば60歳から受け取ることも可能となっており、このことを「老齢基礎年金の繰り上げ支給」といいます。ただし、寡婦年金は、老齢基礎年金との併給ができないため、60歳から老齢基礎年金を繰り上げ支給している場合は受け取ることができません。 夫が死亡した時点で、自分の年齢や年金の繰上げ支給を受けているかどうかが寡婦年金を受給するための要件ともなりますので、覚えておきましょう。
5年以内に申請しなければならない
寡婦年金の受給をうけるための申請は5年以内。最寄の市区町村役場や年金事務所の窓口で申請しましょう。 請求するときに必要な書類は、以下の通りです。 ☑年金請求書:各窓口に用意されています。 ☑年金手帳 ☑戸籍謄本:死亡者との続柄、請求者の氏名、生年月日が確認できるもので、受給権発生以降6ヶ月以内に交付されたもの ☑世帯全員の住民票:写しで可 ☑死亡者の住民票の除票:住民票の写しに含まれている場合は不要 ☑請求者の収入が確認できる書類:所得証明書、課税証明書、源泉徴収票など ☑受け取り先金融機関の通帳 ☑年金証書:公的年金から年金を受けている場合 ☑印鑑:認印でも可 死亡の原因が第三者行為であった場合は、別途書類が必要となります。 ☑第三者行為事故状況届 ☑交通事故証明、または事故が確認できる書類 ☑確認書 ☑損害賠償金の算定書 ちなみに、死亡一時金を受ける場合は、夫が死亡した日の翌日から2年を経過した日が時効となります。つまり、死亡日の翌日から2年以内に申請しなければ、死亡一時金を受け取ることはできなくなるということを理解しておきましょう。
65歳以上では受け取れない
寡婦年金を受給できる期間は、60歳から65歳になるまでの5年間と期間が定められています。そのため、妻が60歳を過ぎてから夫が死亡した場合は、受給できる期間は短くなります。 また、65歳を過ぎてから夫が死亡した場合、寡婦年金を受給することはできません。そのため、寡婦年金か死亡一時金かを選択する場合は、こうした年齢要件なども検討する必要があるでしょう。 ちなみに60歳代前半の老齢厚生年金と寡婦年金は、どちらかを選択して受給することになりますが、死亡一時金の場合は、60歳代前半の老齢厚生年金を受給していても受けることが可能です。 もしいずれかの受給を考えているなら、寡婦年金の総額と60歳代前半の老齢年金総額+死亡一時金を比較して有利になるほうを選ぶのがよいでしょう。
寡婦年金が消滅するとき
寡婦年金の受給は、次のいずれかに該当したとき消滅します。そのため、該当箇所に当てはまる場合は、ただちに失権届けを提出しなければなりません。 ☑65歳になったとき ☑再婚(事実婚を含む)したとき ☑妻が死亡したとき ☑養子となったとき ☑老齢基礎年金の繰上支給を受給したとき また、夫の死亡原因について労働基準法による遺族補償が行われる場合は、死亡日からの6年間は寡婦年金の支給は停止されます。
寡婦年金と死亡一時金の違い
寡婦年金と死亡一時金の違いについては、以下を確認しておきましょう。 ☑寡婦年金 1.区分:60歳から65歳になるまでの5年間 2.死亡者の保険料納付:第1号被保険者として10年以上の納付期間がある 3.受け取る人:婚姻関係が10年以上にわたる妻(事実婚も含む) 4.受給権者の生計維持:夫により生計維持されていること 5.受給権者の年齢:65歳未満 6.遺族年金との関係:寡婦年金か遺族年金のいずれかを選択する 7.老齢基礎年金との関係:老齢基礎年金を繰上受給すると寡婦年金は受け取れない 8.60歳代前半老齢厚生年金との関係:いずれかを選択する ☑死亡一時金 1.区分:一時金として受け取る 2.死亡者の保険料納付:第1号被保険者として36ヶ月以上の納付期間がある 3.受け取る人:妻、子供、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹 4.受給権者の生計維持:夫と生計同一であること 5.受給権者の年齢:年齢要件なし 6.遺族年金との関係:遺族基礎年金が優先される 7.老齢基礎年金との関係:併給可能 8.60歳代前半老齢厚生年金との関係:併給可能 寡婦年金を受給するための要件として大切なことは、「死亡した夫が第1号被保険者としての保険料納付期間と保険料免除期間を合わせて25年以上の年金期間があること」、「老齢年金や障害年金等を受給したことがないこと」などを覚えておきましょう。 また、「死亡した夫との婚姻期間が10年以上であること」や、「夫が死亡した当時、夫によって生計を維持されていたこと」、「夫が死亡した当時、65歳未満であること」、「遺族基礎年金を受け取る権利がないこと」なども重要項目となります。
自分が寡婦年金に該当するかまずは相談をすべきである
寡婦年金についての基本的な知識を持っていることは大切ですが、どうしても自分が寡婦控除の支給対象となるかどうか迷ってしまう場合は、年金事務所の窓口で相談してみるのが良いです。 また、自営業なので寡婦年金や遺族年金だけでは心もとないということであれば、共済などを利用した「小規模企業共済」などを利用しておくのもいいかもしれません。
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