日本の年金制度は、何種類かあるため、わかりにくいことが多いもの。企業年金基金は、企業に任せきりで従業員はあまり仕組みを知らないこともあるようです。転職を繰り返している方は、自分がどんな制度の年金に加入しているのかを確認してみましょう。
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企業年金基金の基本
企業年金の中のシステム
企業の中で、老後資金の給付として、退職時に一括で支払われる「退職金」はよく知られています。企業年金は、毎月定額が支払われるものです。企業年金基金とは、あらかじめ給付される年金が、基本的に確定している基金型確定給付企業年金という企業年金制度を実施するために設立される法人です。
企業年金の歴史
そもそも企業年金というのはどうして始まったかを知っている方は、意外と少ないかもしれません。企業年金は、「退職金」を支払う企業が分割して支払う方法はないだろうか、という退職年金という考え方から始まっています。 退職金をまとめて払わなくて済むので、その分の利息に相当するお金をプラスして支払うことができるという考えになり「企業が社員のために年金を支払うしくみ」である「企業年金」は始まりました。 高度成長期からバブル期は企業年金の運営も順調でしたが、バブル崩壊後、運営に陰りが出ていて昨今の企業年金基金団体の解散などが起こってしまいました。
企業年金は種類がある
企業年金にはいくつかの種類があります。 ☑ 1.確定給付企業年金(規約型・基金型) ☑ 2.確定拠出年金 ☑ 3.厚生年金基金 ☑ 4.税制適格退職年金 ☑ 5.中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度 ☑ 6.自社年金 この中で、「企業年金基金」という団体で扱うものが確定給付企業年金です。これには規約型、基本型とあり基本型は設立するためにはいくつかの決まりがあり、母体となる企業などから独立して、年金資産の管理・運用や受給者への年金給付を行うという特徴があります。 企業年金基金は、公的年金である国民年金や厚生年金保険に上乗せして、いわゆる3階部分の企業年金の給付を行います。
設立の条件
企業年金基金は基金型確定給付企業年金を支払うために年金資産の管理や運用を行ったり、受給者への給付を行うために設立します。 基金型確定給付企業年金の実施のために企業年金基金を法人設立する場合、加入者数の条件があるため、規模が小さい企業では、単独で企業年金基金を設立することができません。現代では、300人以上の加入者が必要となっています。
条件に満たない場合は、規約型を検討することも
単独で人数の条件を満たせない場合には確定給付企業年金を実施する場合、基金型ではなく規約型を検討するか、他の事業主と共同で設立することを目指すことになります。 法人設立では、代議員、代議員会、理事、理事長、監事が置き、基金の事務を遂行するための事務局が置かれ、基金の業務運営を行います。母体の企業とは別の組織になりますから、独立性が高く、健全な年金制度の運営が可能になります。また、設立するには厚生労働大臣が認可が必要です。
企業ごとにある上乗せ支給
厚生年金基金は、国の老齢厚生年金の代行部分(報酬比例部分)に上乗せして、基金が独自に支給する年金をプラスアルファ部分といい、代行部分と併せて基金から支給されます。しかし、企業年金は公的年金である国民年金、厚生年金に上乗せ支給される年金、いわゆる3階部分の年金になるものです。
プラスアルファについて
プラスアルファの厚みは代行部分の給付現価を100%とした時のパーセンテージで表されており、プラスアルファ部分に含める範囲の違いにより、準実額(給付額の高さの割合)と理論値(給付額の高さに加え、厚生年金本体との支給開始年齢の差も考慮)の2つに区別されていました。 しかし、平成12年改正によって代行部分の支給開始年齢引上げが実施されたことに伴い、準実額と理論値の区別がなくなり、プラスアルファは一本化されました。
プラスアルファの見直しについて
平成13年には厚生年金基金運営の弾力化措置によりプラスアルファ部分の給付水準の見直しと終身年金部分の厚みも見直されています。プラスアルファ部分の給付水準の見直しでは代行部分の3割程度まで確保していることとされていましたが、見直し後は1割程度まで確保していることとされました。 なお、基金解散時の掛金の一括拠出の負担が困難なため、やむを得ず給付設計の変更を行う場合は、1割程度の給付水準を満たしていなくてもよいこととされています。 終身年金部分の厚みの見直しは65歳以降の支給の給付について、終身部分の現価相当額は代行部分の現価相当額の15%を下回らないこととされていましたが、見直し後は5%を下回らないこととされてました。
負担元は企業
企業年金の掛金は、原則として事業主が負担しますが、本人同意の上、2分の1を上回らない範囲で本人に負担させることも可能です。 しかし、基金運営のための掛金もすべて企業が負担をしているので、基本的には基金加入者の負担はありません。
規約の変更
企業年金基金(基金型確定給付企業年金)では、規約を変更するために厳格な手続きが必要となります。規約の変更には代議員会での議決が必要不可欠です。 例えば、掛金の拠出に関する事項の規約に変更が発生した場合には代議員での議決が必要になります。加入者が掛金を負担する場合には、当該負担に関する事項の変更なども同様の議決が必要です。 代議員会の議決が必要なのは、規約の変更の他、予算、事業報告及び決算などとされています。
途中退職の場合
企業年金に加入している場合、途中で退職した場合、3年以上加入していれば脱退一時金などの制度があります。退職時に、企業年金の分は今後どうするのかをきちんと確認することが大切です。
3年以上20年未満で退職
☑ 脱退時に一時金が受け取り可能 ☑ 脱退一時金相当額を他の年金制度へ移動。(年金ポータビリティ) ただし、転職先の年金制度が引き受けない場合もあります。この場合、企業年金連合会に脱退一時金相当額の移換を行い、通算企業年金として将来受けることが可能です。 また、再度転職した場合など、企業年金連合会から他の企業年金への年金給付等積立金の移換は、受け入れ先の年金制度の規約に定めがある場合は可能となります。
20年以上60歳未満で退職
☑ 脱退時に一時金が受け取り可能 ☑ 脱退一時金の支給を60歳まで繰下げて、60歳から老齢給付金(年金または一時金)として受けとることも可能。 また、繰下げ期間中は、据置利率に応じた利息が付与され、年金受給中は給付利率に応じた利息も付与されます。
60歳で退職
60歳から年金または一時金が受けられます。60歳で退職する場合は繰り下げ期間はありません。年金受給中は、給付利率に応じた利息が付与されます。
厚生年金基金との比較と実情
企業基金は独自運用
基金型確定給付企業年金は、企業年金基金によって母体となる企業などから独立し、年金資産の管理・運用や受給者への年金給付を行うという特徴で、独自運用されています。企業年金基金は厚生年金の代行給付は行わず、厚生年金に上乗せする形です。
企業年金基金は、新規設立が可能
企業年金は、条件を満たせば新規設立が可能。ただし、設立には厚生労働大臣が認可が必要です。 基金型確定給付企業年金は300人以上の加入者が必要となっています。小規模の企業では単独での設立は難しく、基金型ではなく規約型を検討することも。基金型で設立したい場合は他の事業主と共同で設立することもあります。
厚生年金基金の廃止へ
2014年度に施行された改正法により厚生年金基金はその役割を終えようとしています。一時は基金数1,800、加入者数1200万人を超えるまで普及していました。 しかし、同種同業の中小企業が多数集まって設立された総合型基金では運用損失による積立金不足が起こり、代行部分にまで食い込む「代行割れ」が多数発生してしまいました。 このままでは、事業所の連鎖倒産や厚生年金本体の財政への悪影響が懸念されたため、抜本的な法改正が行われました。このため、2014年4月以降、新たに厚生年金基金を設立することは認めらないことになったのです。
最低積立基準額を確保できなければ、解散・代行返上へ
既存の基金についても、5年の移行期間を設けられ、この期間内に原則として「解散または代行返上すること」が求められています。財政状況が健全な基金については5年経過後も存続が認められますが、代行部分の債務の1.5倍または最低積立基準額以上の積立水準を確保する必要があります。 これらは、ほとんどの基金にとって現実的な選択肢ではあるので、廃止の方向へ進むと考えられているようです。
厚生年金基金からの移行
2014年度に施行された改正法により、厚生年金基金は財政状態が健全であっても5年間の移行期間内に解散または代行返上が求められているため、なんらかの選択がせまられています。 そのため、厚生年金基金からの移行として、方法は以下の3通りです。 ☑ 1.厚生年金基金解散時に資産があれば加入者に分配する。 ☑ 2.基金の継続制度として確定給付年金(DB)を創設する。 ☑ 3.基金の継続制度として確定拠出年金(DC)を創設する。 のいずれかになります。しかし、いずれもメリット・デメリットがあります。
1.厚生年金基金解散時に資産があれば加入者に分配する
企業にとっては厚生年金基金解散時に資産があれば加入者に分配、支払ってしまえば、後は何もすることがないというメリットがあります。デメリットは、企業として従業員のための将来支援制度がなくなることです。 また、従業員にとってもデメリットが。それは、厚生年金基金の残額として支給される金額は、一時所得として課税されてしまうため、所得税が上がり、納税金額が上がってしまう可能性があります。
2.基金の継続制度として確定給付年金(DB)を創設する
基金の継続制度として確定給付年金(DB)を創設するという選択をした場合、解散時の資産も確定給付年金に移行するため、加入者にとっては、表面上は退職後に何かしらの給付が約束されているように見えます。 実際には条件が見直しされて、同じ給付額ではないのですが、企業としては社内の同意を得やすいということがメリットです。 デメリットは、構造上将来債務を背負うという点では厚生年金基金と同じ仕組みのため、積立不足のリスクがつきまといます。特に基金型でDBを導入すると、損失補てんの段になって、各社足並みそろわず問題となることがあり得ます。 事業規模100名以下のところでは、自社単独でDBを導入するとコスト的にも合わず、受け皿となる引き受け金融機関を見つけるのが困難ということでしょう。
3.基金の継続制度として確定拠出年金(DC)を創設する
基金の継続制度として確定拠出年金(DC)を創設する場合は、解散時の資産も確定拠出年金に移行するため、企業としては会社は将来債務のリスクから解放される事がメリットです。 しかし、従業員が運用責任を負うという点で、社内の理解を得ることが難しいということがデメリットになるでしょう。従業員に理解を得るためには、厚生年金基金での予定受給額と比較して十分な拠出額、納得感のある想定利回りの設定と、従業員のフォローアップが必要がありそうです。
まずは自分の加入している状況を企業に確認しよう
自分がどんな年金制度に加入しているかわからない人も少なくありません。企業に勤めている人であれば厚生年金に加入していることは給与明細で分かりますが、企業年金基金となると加入しているかどうかもわからない場合もあります。 特に、転職をしている場合、企業年金に加入していたのに、移行が行われているかわからないことも。将来のためにも、勤務している企業に年金の加入状況を確認してみましょう。
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