年金を納めなければ将来年金は受け取れない。理解しているけれど今の生活では年金の納入が難しい。こんな不安を持っている人は年金が免除される制度を活用しましょう。とにかく年金は「未納」にしないことが大切です。手続きを知って負担を減らしましょう。
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年金納付が全額免除される人の条件
所得が一定額以下
本人や同居している世帯主、配偶者などの所得が一定額を下回り、国民年金保険料の納付が困難な場合には、申請をおこなうと年金保険料の納付が免除されることがあります。
年金が免除になる所得の基準
年金の免除制度は、その世帯の所得と家族の人数で免除が受けられるか・受けられないかが決まります。仮に免除が受けられたとしても、上記のような「所得の世帯」「世帯人数によって免除される金額が変わります。 所得の判断基準は前年度(もしくは前々年度)の所得額が対象になります。所得は世帯主本人だけに限らず、配偶者の所得も判断基準の材料に含まれます。このように、自分に収入がまったくない状態であっても、同居する家族に一定の所得がある場合には全額免除を受けることはできません。
全額免除はダメでも「一部免除」されることがある
世帯人数と世帯所得によっては、全額免除ではなく、年金の一部分が免除されることがあります。免除される金額の比率は3/4免除・半額免除・1/4免除の3通りがあります。 夫婦2人と子供2人の4人家族のケースを例にすると、以下のように免除される比率が変わります。 ☑所得が162万円まで・・・全額免除 ☑所得が230万円まで・・・3/4免除(1/4納付) ☑所得が282万円まで・・・1/2免除(1/2納付) ☑所得が335万円まで・・・1/4免除(3/4納付) ちなみに「所得」とは収入から社会保険料控除額などを差し引いたものです。「収入額」(いわゆる給与明細でいう総支給額)とは異なりますので、目安にする場合は区別しておいてください。
免除の手続きをおこなうメリット
保険料の免除には手続きが必要です。「どうせ払わないから」と放置してしまうと、将来年金の受け取りに大きく影響を及ぼします。支払えない場合であっても、保険料を免除申請していれば、その間は「未納」にならず年金支給の対象と見なしてもらえます。 つまり、免除の申請をおこなわず放置しておくと「未納」として扱われ、年金を受け取ることができなくなります。免除の申請さえおこなっておけば、免除期間中について将来「1/2の年金額」を受け取ることができます。まったくもらえないのと、1/2もらえるのでは話が大きく変わります。 また、保険料免除・猶予の申請をおこなうと、急な病気やケガ、死亡などの事態に見舞われた場合、障害年金や遺族年金が受け取れる対象として見なされます。このような大きなメリットも秘めているため、年金の免除申請は迷わずおこないましょう。
保険料納付猶予制度という別の制度もある
免除ではなく、納付期限を延長してもらえる「保険料納付猶予制度」もあります。この制度が利用できるのは、20歳から50歳未満の人で、所得が一定額を下回っている場合です。本人が申請書を提出し、承認がおりれば保険料の納付に猶予期限を与えてもらうことができるのです。 一見、「免除」とよく似ていますが、じつは大きな違いがあります。猶予制度は、学生と所得が一定額を下回る50歳以下の人が対象です。 注意すべき点は、猶予で支払っていない期間は年金額に反映されないという点です。「免除」の場合は年金額の1/2が受け取れますが、「猶予」の場合は年金が支給されません。そのような面では、「未納」と変わりありません。 しかし、まったく年金を納付せず・手続きもおこなわない「未納」とも異なります。申請をすることで障害年金や遺族年金などの対象とされる点では「未納」とは一線を画しているといえるでしょう。
「免除」と「猶予」の違いは?
「免除」とは、端的に表現すると「納付しなくてよい」ということです。一方「猶予」は、「納付する期間を延長してもらえる(今すぐ納付しなくてよい)」ということになります。 「猶予」は「免除」ではありませんので、今すぐではないものの「いつか」は納付する必要があります。もちろん、この「猶予期間」の分が未納になると、受け取れる年金が少なくなります。
配偶者からDVを受けて別居中
配偶者によるドメスティック・バイレンス(DV)を受け、別居を余儀なくされている人は、本人の所得が一定額を下回っていれば、配偶者の所得に関係なく保険料の一部または全額が免除されます。これを「特例免除」といいます。 この制度は平成26年より、申請から2年と1ヶ月前の時点まで過去にさかのぼって免除できるように変わりました。もし、今の現状が2年前から続いていて、保険料の未納がある場合は近くの年金事務所に相談してみましょう。 初回申請する際には、配偶者暴力相談支援センターなどの公的機関が発行する証明書の提出が必要です。また、相談する人が世帯主の場合は、所得審査を必要とされる場合があります。 詳細はこちら
パートやアルバイト
パート・アルバイト等の仕事に従事し、厚生年金に加入していない人は保険料の免除や納付猶予制度を申請することができます。 また、ニートの状態でも50歳未満の人の場合であれば、同じように保険料の免除や納付猶予制度を申請することが可能です。 平成28年6月まではこれらの制度の年齢制限は29歳までに設定され、制度の呼称も「若年者納付猶予制度」とされていました。しかし現在では年齢が50歳未満まで引き延ばされ「保険料納付猶予制度」という名前に変わっています。 ニートだと申請は通らない、ということはありません。ニートであっても申請せず放置したままにしておくと「未納」の状態と見なされ、大切な年金が受け取れなくなってしまいます。 配偶者がいない、家族の助けが将来得られそうにないという人であれば、「免除」や「保険料納付猶予制度」の申請は迷わずおこなっておきましょう。
会社を退職した
会社を退職し、現在失業の状態にある人は「特例免除」の対象になり、保険料の納付が免除(一部免除)となる場合があります。 ハローワークで失業保険の手続きをする際に、保険料の納付に関する説明をおこなっているところもあります。失業状態の人は、年金の保険料が「免除」される可能性があることを覚えておいてください。
学生のため収入がない
日本に在住している人は、20歳になった時点から国民年金保険料の納付義務が発生します。しかし、学業に専念する「学生」の場合は、在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」という制度が利用できます。 アルバイトなどをしながら学校に通っている場合は、所得が一定額を下回っていれば申請できます。所得基準は申請者本人のみが対象となり、家族の所得は計算に含まれません。
学生であっても年金納付義務がある
「学生のうちは年金は支払わなくていい」として、年金の存在を無視している人もたまに見受けられます。しかし、「20歳以上のすべての人に支払う義務がある」のが年金の特徴です。 学生の場合は、本人に関する申請書と添付書類を各部署に提出すれば手続きは完了します。在学中のケガや病気に対する保障を受けることもできるため、今支払わないとしても「学生納付特例制度」の申請だけは忘れずしておきましょう。 手続きをしなければ、学生時代の年金はほかのケースと同じように「未納」と見なされてしまいます。
年齢が20歳以上50歳未満
平成28年7月から、年金の免除や猶予の申請がおこなえる年齢が大幅に引き延ばされました。現在では30才以降や40代の人でも、50歳未満であれば年金の納付猶予制度の対象となります。 つい最近までこの制度の対象者は「20歳から30歳未満」とされていたため、年金の支払いに苦心している人(50歳未満)は、あらためて「納付猶予制度」に注目してみましょう。
年金免除を申請する方法
年金事務所の窓口へ相談に行く
年金の免除や猶予に関して困っている場合は、年金事務所の窓口に相談することもできます。 離職から時間が経っていたり、これまでの年金を滞納している・これからも年金を支払うことが難しいなど、くわしく相談したい場合は年金事務所の窓口を訪ねてみましょう。
申請に必要となる添付書類
申請者全員が必ず必要になるものは「国民年金手帳」もしくは「基礎年金番号通知書」です。失業の特例免除を申請する場合は、失業したことが確認できる「離職票」や「雇用保険受給資格者証」が必要になります。 また、場合によってはこれ以外の添付書類の提出を求められるケースもありますので、下記の日本年金機構のホームページを参考に、必要となる書類の準備を行ってください。 詳細はこちら
パート・アルバイト(厚生年金に未加入)の人
パートやアルバイトの仕事に就いていて、厚生年金に未加入の人の場合は審査に通る必要があります。保険料免除の申請をおこなう場合は、「本人・世帯主・配偶者」それぞれの所得審査があり、納付猶予の申請の場合は、「本人・配偶者」それぞれの所得審査があります。 パートやアルバイトの人の場合では、本人の所得によっては審査に通らない可能性もあります。そのような場合は、配偶者の扶養に入るなど別の方法の検討をしてみることも必要かもしれません。(ただし配偶者がサラリーマンであり、本人の所得を130万円未満に抑える必要があります。)
学生の人
学生の場合は、年金手帳や申請書のほかに「学生証」または「在学証明書」の提出が必要になります。申請は、市区役所や市区町村役場でもできますが、学校によっては「学生課」でできる場合もあります。 学生の場合は「免除」ではなく「猶予」の対象になり、在学期間中に納付しなかった分を将来納付することになります。
会社を退職した人
会社を退職し、失業状態にある人は「特例免除」の申請をおこないます。本人だけでなく、世帯主や配偶者それぞれの所得審査を要します。 また申請のときには、失業状態であることがわかる「離職票」や「雇用保険受給資格者証」の提出が求められます。勤務していた会社からこれらの書類が届いたら、ハローワークへの失業保険の申請とともに「特例免除」の手続きをしてください。 失業保険の申請にハローワークを利用するとき、「失業保険の説明会」が開かれます。そのときに年金事務所の人が説明や相談に来て、説明用紙を配布することもあるため(地域によって違いがあります)、その機会を利用してみるのもよいでしょう。
失業中の場合は離職票を持参する
失業による「特例免除」を受けたい場合は、世帯主や配偶者それぞれの所得審査が必要になります。また、失業していることを証明する「離職票」や「雇用保険受給資格者証」の写しの提出が求められるため、勤務していた会社からこれらの書類が届いたら、特例免除の手続きを始めてください。
年金手帳と本人確認書類が必要
申請の際は年金手帳のほか、用意すべき書類がいくつかあります。 ☑申請書 ☑本人確認書類(運転免許証等) ☑学生の場合は、学生であることを証明する書類(在学証明書や学生証) 窓口を訪ねるときは、これらの書類は必ず持参しておきましょう。
申請はいつでも可能
免除や猶予の申請は、基本的にいつでも可能です。保険料の納付期限から2年たっていなければ(申請時から2年1ヶ月前まで)、さかのぼって免除の申請をおこなうこともできます。 申請が遅れると、障害年金や遺族年金にも影響するため、免除や猶予の申請はできるだけ早めにおこなうことが大切です。
申請は年度毎おこなう必要があります
すでに申請書を提出し、受理されているからといって安心してはいけません。1枚の申請書が有効なのは、7月から翌年6月までです。申請する年度が複数にわたる場合は、年度毎に申請書を提出する必要があります。 つまり、免除や猶予の申請は毎年おこなうということになります。最終月は6月になるので、7月になったらあらためて申請手続きをおこないましょう。
郵送での申請も可能
年金納付の免除や猶予の手続きは、郵送でもできます。モレや添付忘れがないように注意して、住まいの市区役所や市区町村役場に郵送しましょう。
申請書は日本年金機構のHPから
免除や猶予に利用する申請書は、年金窓口で入手できるほか、「日本年金機構」のホームページからダウンロードして利用することもできます。 記入する内容は、本人や家族の名前や生年月日のほか、前年の所得額・本人や配偶者などの税申告の有無・特例認定区分などといった細かいものになります。 モレや誤りのないように、自宅で記入して持参すると時間の短縮にも繋がります。 詳細はこちら
お金に余裕がない場合は免除申請を検討しよう
年金は、日本に住む20歳以上のすべての人に納付する義務があります。年金を納めないことによるデメリットは大きく、未納のままにしておくと、将来受け取る年金が受け取れなくなります。20歳以上の人は、学生であっても必ず年金を納めることが必要です。 しかし、失業などでお金に余裕がない人にとって、年金の納付は大きな負担になります。このような場合は、年金の免除または猶予の手続きを必ずしましょう。将来年金を確実に受け取るための「重要な手続き」です。未来のための備えの一環として、忘れずに済ませてください。
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